笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字1045は「示」。女性からの指示語は定着していない

今日の漢字は「示」。展示、表示、暗示、示唆、示威行為、大田泰示

 

 以前、年下の女性上司に仕えたことがある。

 個人的な感想で、かつ個体にもよるから普遍的ではないが、結論は、「2度と女性上司の下では働きたくない」。

 一番大きいのは、物事を感情で判断されたり、感情で返されることが多かったこと。こちらが論理的に説明しても、「感覚的に変だ」とか、「その考えは気持ち悪い」とおよそ理屈に合わないことを主張され、対応に困ったものだ。私には娘がいて、娘の会社の上司も女性で、その話をしたら「うちもよくある。わかるわかる」と思い切り共感された。

 

 男性は右脳型で論理的に考えるのに対し、女性は左脳型で感情を重視すると聞いたことがある。今や女性上司も当たり前の時代だから、お互いが感情でぶつかるのではなく、うまくやっていくしかないが、当事者となれば困惑することしきりであった。

 

 そんな女性上司から「これ、コピーとって」と言われたことがある。「年上の部下に向かってその言葉はないだろう」と、一瞬むっとした。「他に言い方ないんか。けったくそ悪い」。そんな日々の細かいやりとりが、次第にその上司に対するネガティブ感情となって積み重なっていった。

 

 しかし、劇作家の平田オリザがこんなことを言っていた。「男性上司が男性の部下に「これ、コピーとって」と言うのは当たり前。しかし女性上司が男性部下に言う際、「これ、コピーとってください」「これ、コピーとって」「これ、コピーとって頂戴」のどの言葉もしっくりこない。この原因を「日本語は、久しく男性上位の社会の中で指示語が発達してきたゆえに、女性からの指示語が発達していない」と指摘する。要するに、女性が男性に指示したり命令する文化がなかったがために、指示される男性は戸惑うと分析している。入院中の高齢男性が、若い看護婦からいろいろ指示され、「子ども扱いされた」と腹を立てるのも、女性からの指示語に男性は戸惑っているのである。

 

 会社だけでなく、女性から指示されることに慣れていない男性は、いきなり女性から上から目線で指示されることに大いに戸惑うのである。平田氏は、「だから新しい時代の新しい女性の話し言葉は、今は過渡期だが、いずれ当たり前のように定着する」と予測している。

 

 だから先程私が「コピーとって」に腹を立てたのは、その言葉に慣れていないだけなのかもしれない。さらに思い返せば、先の女性上司も、本当は「コピーとって下さい」「コピーとって頂戴」といくつかの選択肢を考えた末の発言だったかもしれない。これは、女性上司から年上男性部下への明確な指示語がこの世に存在しない結果なのだと、私は平田氏の主張に納得した。

 

 言葉は生き物であり、社会の変化に追随して変化していく。総理大臣や会社の社長がどんどん女性になっていけば、女性からの指示語は、違和感なく一般化していくであろう。

 

好きなら行動で示して