今日の漢字748は「民」。上級国民になるためには
今日の漢字は「民」。民族、民間、市民、民話、民主主義。
「上級国民 下流国民」(橘玲)で上流、下流かを判断する物差しとして、現代日本社会の分断の元が大卒か非大卒かの学歴の差だと指摘する。
その根拠は社会学者の吉川徹氏の論。それによれば、若年ワーキングプア、正規・非正規格差、教育格差、勝ち組負け組、上流下流、子どもの貧困、結婚できない若者、マイルドヤンキー、地方にこもる若者、地方消滅、次々に見出される現代日本の格差現象の正体は、実はすべて「大卒学歴の所有、非所有」と指摘する。
大卒でも東大卒のフリーターとか、大学院を出たネットカフェ難民などが話題になっているものの、彼らは上流階級にぎりぎりかかっているためにジョークにできるが、高卒・高校中退は「下層階級」で、その経済的困窮や過酷な生活は洒落にならないという。
2000年代に流行した下流社会は誰もが下流に落ちる可能性があるという意味で使われたが、それは事実ではなく、現代社会においては、「下流」の大半は高卒・高校中退の「軽学歴」層なのである。
それを裏づけるのが、次の表。
各層における現代日本人のポジティブ感情、いわゆる「自分か幸福かどうか」について比較している。
それによると、
|
ポジティブ感情 |
女性・若年・大卒 |
52.07 |
男性・壮年・大卒 |
51.81 |
女性・壮年・大卒 |
51.72 |
男性・若年・大卒 |
50.75 |
女性・若年・非大卒 |
49.58 |
男性・若年・非大卒 |
48.81 |
女性・壮年・非大卒 |
48.69 |
男性・壮年・非大卒 |
47.94 |
圧倒的に非大卒の人々のポジティブ感情が低い結果となっている。
しかも女性の方が男性よりもポジティブ感情が高い。
この現実を突きつけられると、親子や塾、受験産業での教育熱が高まれば高まるほど格差を助長するという推測も成り立つ。
中学校や高校で授業についていけなくなれば、さらに大学や専門学校に進学して勉強をしようという気にならない。高校中退をすると、その後はなかなか給料の高い会社に入りにくいという現実に接し、下流階級になり、幸福度が下がっていくということにもなる。
福沢諭吉が「学問のすすめ」で、「人は生まれながらにして貴賤・貧富の差なし。ただ、学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり」と、明治の時代から学問によって差が開くことを喝破していた。教育の本質は上流、下流に格差を分断する格差拡大装置と言える。
そういう意味では、小学校から塾に通わせる経済力のある家庭で育った子供は、大学まで行ける可能性が大きい反面、経済的になかなか塾に行けない子どもは、独学で大学に行けるように努力しなければならない。ここが、最近よく言われる、親の経済力で大学の進学度合いが違うと言われる所以である。
教育という格差拡大装置のベルトコンベヤーにうまく乗った子供たちは、上流階級に通じる道が開ける一方、乗れない子どもたちは下流階級まっしぐらとするならばあまりに切ない。しかし上流、下流が大卒か非大卒かで別れるような体制の中、子どものうちからその行き先を見据えて死に物狂いで勉強しなければならないとしたならば、とても大変であるし、その格差は今後より一層開いていくような気がする。