今日の漢字604は「説」。ドイツ人女性が若いカップルに説教する現場をみた
今日の漢字は「説」。説明、解説、学説、定説、説得、新説。
20年前に訪問したドイツでの話。
ドイツでは、レストランは敷居が高いので、デパートやショッピングセンターにあるカフェテリア式のレストランをよく利用した。
ドイツには名物「シュバインシュニッチェル」という、日本のトンカツに近い豚肉のフライがとても美味しく、良くそれを食べていたが、その日の夜もその料理を頼んで一人テーブルに付き、むしゃむしゃと食べていた。
店内は人がまばらで、若いカップル2人と、小さい子供2人を連れた4人連れの家族が近くで食事をしていた。
すると突然、若いカップルが公衆の面前にも関わらず激しい口論の喧嘩を始めた。ドイツ語でお互いを罵り合っている。
あーこわ。ドイツ人ってこういう場所でも喧嘩するんだ。日本人なら恥ずかしくて、一旦レストランから移動して、人目のつかない処で喧嘩するが、ここにいるドイツ人はお互い熱くなって、口角泡を飛ばす状態。お互いに一歩も引こうとしない。とにかくやかましい。
まー激しい喧嘩だこと。この二人には公衆は全く気にならないようである。
すると、近くにいた家族連れの母親がやおら立ち上がり、つかつかとカップルのテーブルに近づいた。
何か注意でもするのかと見ていると、案の定、物凄い勢いでカップにしゃべり始めた。
「ちょっとうるさいからあっちでやって」などという甘っちょろいもんではない。
ドイツ語なのでわからないが、自分の子供の方も向きつつ、二人に説教らしきものを始めた。物凄い剣幕と機関銃トークだ。
私なりに翻訳してみた。
「あんたらそうやって喧嘩するのを、そこにいる私の子供たちが見ていんのよ。何てことするの。私達夫婦は決して人前でこんな喧嘩はしないわ。なぜかって?それは子供の教育に悪影響が出るからよ。あなたらの喧嘩を見てうちの子供たちが真似して、人を人とも思わないような態度を取ってグレたらどうすんのよ。あんたら責任取ってくれるの?あー?」
30代後半とおぼしき若奥さんはドイツ語でそうまくし立てた。(と思う。)
若いカップルは、その剣幕に圧倒され、そそくさと罰が悪そうにその場を立ち去った。
家族の旦那は、ぽかんとその一部始終を見つめるのみ。
奥さんは何事もなかったのように席に戻り、食事を続けた。
女性は強い。というか、ドイツの女性は強い。
日本もそういうシーンがないわけではないが、「申し訳ないが、子供が見ているからよそでやって」と静かに言う。しかしそう言うのも稀で、ほとんどは見て見ぬふりとなる。
しかし、ドイツでは、道徳上見過ごせない行為に対しては、毅然とした態度で注意、説教をするのだと、自己主張力の凄さにビックリした。
ドイツの首相はメルケル。女性ということをおくびにも出さず、世界を引っ張るリーダーとして圧倒的な存在感を示す。
そんな女性たちが男性顔負けの行動力を発揮できる下地を持った国なのだと改めて納得した次第である。