今日の漢字942は「宗」。日本を覆う4つの現代宗教とは
佐藤優は「還暦からの人生戦略」の中で、キリスト教や仏教など絶対性のあるものではなく、現代の宗教と呼ばれるものが4つあるという。
それは「拝金教」「出世教」「偏差値教」「ナショナリズム教」の4つ。
現代人にとって、お金と出世、それに結びつく偏差値、そしてナショナリズムは絶対的なもの。誰もがこれらに価値を見出し、追い求めていると言っても過言ではない。
なかでも拝金教と出世教は最も強い宗教。ただこの2つの宗教は還暦とともに価値が萎んでいくし、偏差値教は学生をすぎると萎む。そして最後に残るのがナショナリズム教である。
還暦を過ぎると、歳をとることの不安や孤独が加わること、さらにコロナや地震台風などの天災など先が見えない閉塞感のなか、民族や国家、歴史、文化に強く依存して自尊心と矜持を保つ。それはそれでいいのだが、得てして他国や多民族に対して排他的になり、差別主義に陥る。現代のシルバー世代が最も入信しやすい宗教がナショナリズム教だと言える。
少し前まで、日本礼賛のテレビ番組がやたらと放送されていたのも、ナショナリズム教の現れ。外国人が日本の文化や生活様式に感心したり驚いたりするのを通じて、自己満足的な気持ちで満たす。これらの番組は多くの高齢視聴者に支えられているのかもしれない。
東京オリンピックの国威発揚イベントなどにも、会場で日の丸を振る人は高齢のおじいちゃんぽい人が多い。頑張れニッポンに過剰に反応し、日本が好きだという人はナショナリズム教を疑った方がいいかもしれない。
ところで拝金教と出世教は完全に今の世の中を覆っている。毎日、ニュースやネットで、お金のことを話題にしない日はないくらい、マネー情報が垂れ流される。「金を持つ人が偉い、お金のある人が成功者、国民はお金のある人を目指せ」。テレビはわかりやすいから、そういう切り口で金持ちを礼賛する。それに影響を受ける人は拝金教への入信となる。
一方出世教については、若い人の間では出世意欲がそれほどない人が多かったり、転職により自分を高めていくなど、必ずしも会社どっぷりの出世だけを目指すモーレツ社員は少なくなっている。ポストもどんどん少なくなる中で、いかに自己実現をしていくかにシフトしいているような気がする。
何事ものめり込むと、周りが見えなくなる。顔を突っ込むにしても、どこかに冷静な第三者目線を持ち、斜め上から批判的な視線を持つことと、「どこか違うのでは」というちょっとした違和感に気づくことが重要だと思う。