今日の漢字770は「煩」。煩悩とはほどほどに付き合おう
今日の漢字は「煩」。煩雑、煩悶、思い煩う。
煩悩いうものは厄介であるが、どう付き合っていくかかというのがある。
「お金持ちになりたい」「出世したい」「長生きしたい」「女にもてたい」「あれも買いたいこれも買いたい」などの煩悩と付き合いためにはどうするか。
煩悩が生きるエネルギーやモチベーションになっている反面、マッチポンプ的な要素がある。人間は誰しも強い欲求があり、それを満たしたいがために頑張って緊張状態が続く。自分の願いが叶うとその瞬間はとても気持ちがいいが、また次の欲求に向け緊張し、苦しくなることを繰り返す。だから煩悩を満たそうとするエネルギーは、あまり燃費が良くない。
適度な刺激は人間を活性化することができるが、過度な刺激は逆にストレスになる。如何せん、現代社会は刺激がありすぎる。江戸時代はそれほど娯楽もなく、異性関係や衣食住の物欲にも限界があった。しかし現代は四六時中煩悩を刺激する様々なものが溢れている。
テレビも雑誌もインターネットも煩悩に溢れるものだらけ。あれもほしい、これもほしい、旅行に行きたい、イケメンな彼氏がほしい。商品やスポーツ、セックスなどの情報は「煩悩増殖装置」。今や一歩家を出れば、お金のかかることばかりで、企業は何とか財布の紐を緩ませようと、機関銃のように毎日情報を打ち込んでくる。
お金を使って何かをするというのは、我々の神経を刺激して、麻薬と同じように、ドーパミンという快感物質を分泌させることにつながっている。これには落とし穴があり、ドーパミンは適度に分泌すると気持ちよくなり快感を得られるが、あまりにも連続してドーパミンを出すと、今度はドーパミンを受け取る神経の受容体が麻痺してくる。麻痺すると、それまで同じようなドーパミンを出していたとしても、気持ちよくならない。以前は気持ちよくなったのに、もう気持ちよくならないとして、イライラしてしまう。結果的に「もっともっと」の欲望はとどまることなく、どんどんエスカレートしていく。
「煩悩増殖装置」については、以前はテレビや映画などのマスメディアから受けるだけだったが、インターネットの登場で情報が何万倍にも膨らみ、脳を刺激する情報洪水にさらされている。加えて最近は自分から情報発信をし、それを見た人からの「いいね」評価も気にする刺激も出てきた。「いいね」が少ないと、評価が低いとしてストレスとなる場合もある。これはもはや24時間ドーパミン受容体を刺激し続ける状態。結局煩悩の処理の仕方がだんだんわからなくなり、迷走してしまう。それがエスカレートし「最後にこれしかない」というものに行きついてしまうと、とんでもないことが起きる可能性がある。ブログに返信するコメントがなく、孤独を感じ秋葉原で無差別殺人を起こした人間はまさにブログを通じたコミュニケーションという煩悩に囚われた結果だと言えるだろう。
煩悩とうまく付き合うためには、それにとらわれる頻度を減らす努力が大事。夢中になっていろいろ追い求めているものの数を減らす。煩悩は悪いものではなく、ほどほどの付き合いであれば、適度な刺激となって生きる活力になっていく。そのためには、「ほどほど」のレベル感、「人は人」と周りに流されない、「お金のかからない楽しみ」を見つける。これらをうまく組み合わせながら煩悩にとらわれない生き方をしたいものである。
参考文献:小池龍之介さん、煩悩ってどうすればいいんですか(小池龍之介)。