笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字853は「遥」。伝書鳩は遥か遠くから戻ってくる

今日の漢字は「遥」。遥か彼方、島崎遥香

 

    伝書鳩という言葉がある。鳩の足にメッセージを括り付けて、遠くの人に届けること。

   今の時代、伝書鳩と言っても、ほとんどの人は「?」となるだろう。鳩は公園でパンくずをもらってのうのうとしているイメージしかないが、昔は人間のために労働をしていたと聞くと、若い人は驚くのではないだろうか。

 

    人間は鳩の習性を利用して通信手段として鳩を飼いならしていた。いわば電話の代わりをしていたのである。

    鳩は磁覚に頼り、帰巣本能を駆使するため、たとえ1000キロくらい遥か遠くの場所に運んだとしても、そこから巣のある場所に迷うことなく帰ってくる。このため、巣の近くにいる人の元に確実にメッセージを届けられる。

 

    なぜこの話を出すのかというと、以前とあるベテラン新聞記者との雑談の中で、新聞社が昭和30年に、通信手段として東京の新聞社の社屋で伝書鳩を飼っていたという話を聞いたから。そのベテラン記者の昔話に及び、その伝書鳩の苦労の一旦を披露した。

 

    つまりこういうこと。どこかででかい事件が起きる。例えば栃木や群馬や新潟などの山中で飛行機事故が起きたりすると、記者は電車やバスを乗り継いで現場に赴く。記者はそこに相棒として籠に入れた鳩を一羽連れていく。記者は山中で取材をし、新聞記事の原稿を紙と鉛筆を使って筆記。そして書いた原稿を鳩の足に括りつけ、東京の新聞社本社にある鳩の巣に向けて放つ。鳩は帰巣本能でその新聞社に向かってひたすら一直線に飛び、無事新聞社に着く。デスクは足についた原稿を確認するということをしていたそうだ。

 

    だから、新聞社の周りには、いつも多くの鳩がぐるぐる飛び回っていて、それはそれで壮観だったそうだ。

 

    今でも鳩レースと称し、鳩を飼いならし、いかに早く帰ってくるか、その時間を競うレースがある。鳩を飼うのも道楽だろうが、よしんば優勝などしてしまうと、いとおしく「ぽっぽちゃん」などと愛着が湧くのではあるまいか。

 

    昭和30年代のこととはいえ、そこまでして記事を素早く読者に届けようとした新聞社の努力には改めて敬意を表したい。それにしても、歴史の流れとして、伝書鳩→最寄りの民家で電話を借りて口頭で記事をしゃべる→公衆電話から口頭で記事をしゃべる→衛星携帯電話をもっていき、電話で報告→携帯電話で報告→モバイルで記事を書き、その場から送信 と時代を追うごとに便利になった。さらに、新聞社に送って原稿にしなくても、その場からSNSで世間に情報発信できるのだから、文明の利器とは凄いものだと感心している。

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「遥か」 以外で使うことのない漢字