今日の漢字537は「差」。差別語の表現には注意が必要
今日の漢字は「差」。段差、格差、差額、差異、交差点。
新聞記事で表現してはいけない差別語、不快語というのがある。
性別、職業、身分、地位、境遇、信条、人種、民族、心身の状態、病気、身体的特徴などについて、差別の概念を表す言葉は、差別やいじめにつながるので、なるべく使用しないというきまりがある。
一例を上げると、
アル中→ アルコール依存症
女工→ 女性従業員
坊主→ 僧侶
あんま→ マッサージ師
百姓→ 農民
帰化→ 国籍取得
黒人兵→ 米兵
土人、原住民→ 先住民
犬捕り→ 野犬捕獲員
企業戦士→ なるべく使わない
釣り書き→ 使用不適切=自己紹介書
登校拒否児童→ 不登校児童
強姦→ 女性暴行
こうして見るとかなり使用用語も変遷を経ている。最近のニュースでも、「女性に性的暴行を加えた・・」というが、以前は「いかがわしい行為」という言い方をしていたから、表現が変わった。
アル中はアルコール中毒の短縮版だが、アルコールだけでなく、ニコチン、ギャンブル、薬物など中毒は数多ある。しかし中毒という表現が適切ではないのか、依存症という柔らかい表現となった。
企業戦士は、働き方改革でワークライフバランスの充実を図る方向性に舵が切られて以降、全く聞かれなくなった。企業戦士という言葉はバブル時代に「24時間戦えますか」の栄養ドリンクのコマーシャルで一世を風靡したが、企業のために身を削って働く時代ではない。
釣り書きも今や死語。そもそも形式ばった見合い結婚というシチュエーション自体がないから、男女のプロフィールを記載したものは、今やマッチングアプリの中での情報交換のツールと化している。
帰化も最近使わないようである。帰化で思い出すのは、サッカーフランスワールドカップに際し、ブラジルから日本に帰化した呂比須ワグナー。当時決定力不足に泣く日本代表のFWの切り札として、ブラジルから帰化して日本代表となった呂比須は、日本を1998年フランスW杯に導いた。もし呂比須が日本に帰化していなかったら、日本はW杯に行けなかったかもしれない。ちなみにサッカー選手の有名どころでブラジルから帰化した選手は、ラモス瑠偉、三都主アレサンドロ、田中マルクス闘莉王らがいる。帰化も今や日本国籍取得と言い直さねばならないのである。
サラ金はサラリーマン金融の略だが、今やどの会社も銀行の傘下に入り、安定経営の域を出ないが、2010年以前は、金利制限法の域を超えたグレーゾーン金利という、かなり高い金利で暴利を貪っていた。当時アイフル、武富士、アコムの御三家は連日大量にTVCMを流し、多くの顧客に金を貸付、払えない債務者が自己破産したり自殺者が相次ぐなど社会問題となった。
今でもラジオで法律事務所が過払い金請求の相談を受けるCMを放送している。これも高い金利時代に借りた人の利息を取り返すために弁護士が相談に乗りますということだが、それだけ債務者がいるのだろうか。
とにかくちょっとした差別表現でも、SNSで大きく取り上げられ、批判を受ける。テレビのコメンテーターなどは、その点、相当気を使って言葉を選ばねばならない。コメントが全体的に無難な表現に終始するのは、そういうNGワードの呪縛に囚われているからではないかと勘ぐってしまう。視聴者が自ら情報発信し炎上を誘発する時代において、影響力の大きい情報発信者は、言葉のひとつ一つの重みを考えて発信する必要がある。