笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字480は「喜」。旅行作家の斉藤政喜氏のエッセイを読む

今日の漢字は「喜」。歓喜、狂喜乱舞、喜寿、喜怒哀楽。

 

    個人的に好きな紀行、冒険作家が何人かいて、そのエッセイをよく読む。

 

    下川裕治宮田珠己角幡唯介の紀行文、冒険物をよく読むが、もう一人、忘れてはならない紀行作家に斉藤政喜氏がいる。

 

    シェルパ斉藤ペンネームで親しまれ、雑誌ビーパルで連載をしている作家。エッセイを読まれた方も多いのではないだろうか。

 

    とにかく一般人が普通やらないような旅をして、それをエッセイにまとめている。耕運機やスーパーカブ、さらには飼っている犬と一緒に日本を回ったりと、一風変わった旅を続け、それらをおもしろおかしく書き綴るので、何作か彼の著書を読んできた。

 

    そんな彼が自転車で島を巡る「島旅はいつも自転車で」を読んだ。

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    多くの離島に船で渡り、自転車を組み立ててツーリング。自然や人と交流するさまをハートフルに描いている。

 

    訪問した島は、波照間島八丈島種子島周防大島礼文島、神島、対馬五島列島石垣島小笠原諸島伊豆大島、田代島、隠岐の島、大東島など全22島。

 

    この中で私が行ったことがあるのは八丈島と神島。記載の島でそのほかの島に足を踏み入れたことは全くない。お恥ずかしながら地元礼文島へさえも渡ったことがない。

 

    考えてみれば、日本には4000以上の島があるが、今まで自分が渡った島はおそらく20個にも満たないであろう。記憶にあるだけで北海道は利尻島と焼尻島の2島、沖縄本島佐渡島しまなみ街道で途中下車した大島、徳島から神戸に行く途中の淡路島くらいしか思い浮かばない。

 

    そんな行ったことのない島々の風景は紀行エッセイでエア旅として味わうしかない。

 

   この本の中で惹かれたのは大津島。

 

    太平洋戦争末期、人間魚雷「回天」が作られた山口県周南市の島。徳山から船で40分。ここで20歳そこそこの若者が特攻兵器の潜水艦に乗り込み、敵に体当たりする訓練を受けた。恥ずかしながらこうした島があったことは、今回初めて知った。「回天」とは、日本軍の敗退が続く戦時下で「天を回らし、戦局を逆転させる」願いをこめたようだが、その願いむなしく、145名の搭乗員たちが散った。島にある回天記念館には命を落とした戦没者の写真があり、著者の斉藤氏もそれを見て涙を流す。「戦争も特攻も2度とあってはならない」と強調するがその通りである。いつかは訪れてみたい島であるし、回天を描いた横山秀夫の小説「出口のない海」は読まねばならないと思った。

 

    生き物との共生という観点では、加計呂麻(かけろま)島。鹿児島から奄美大島経由というから果てしなく遠い。

 

    こちらも島の名前は初めて知った。鹿児島県瀬戸内町。斉藤氏はここでマグロの大養殖場を見学。東京ドーム3個分の敷地にマグロが養殖されている。えさのアジ500匹を係の人が豪快にスコップで投げ入れると、海の底から巨大な影が勢いよく現れ、海に消える。

 

    斉藤氏はこのシーンを「横綱白鵬が超高速ドルフィンスイムで海を縦横無尽に泳ぎまわる」と表現しているが、現れた巨大マグロの大きさと迫力に圧倒される。

   

    ここのクロマグロは500kg。大間で獲れるマグロは200kgというから超ド級。一体寿司ネタがどれほど取れるのだろうか。

 

     しかもマグロの姿は青い。冷凍マグロは黒いが、泳いでいるマグロは体のラインが青いのだとか。勉強になった。

    これからは、獲る漁業よりも育てる漁業の時代。しっかりと魚との共生を考えていかねばならない。 

 

    トリビア的な数々の島の知識も斉藤氏の取材力と丁寧な書きぶりで習得できた。

 

    日本には本当にさまざまな特徴のある島が多いと改めて感じた。未経験ゾーンの島旅への憧れが大きく募る斉藤氏の紀行エッセイであった。

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喜色満面の笑みがいい