笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字441は「働」。日本の労働生産性について考える

今日の漢字は「働」。労働、稼働。

 

     日本人はなぜ論理的でないか。労働生産性が低いのかとよく言われる。

   

    デービッド・アトキンソン氏の主張を以下に紹介する。

    日本人はデータをとってきちんと分析をしない。つまり日本人は高度経済成長やバブル景気の際に、日本人は手先が器用、勤勉、技術力があるなどを成長要因として挙げるが、真実が見えていない。

 

    人間の脳はアフリカの大草原で暮らしていた頃から変わっていない。

    何か物音が聞こえたら、反射的に逃げる。エビデンスやデータをとっていたら、ライオンに食べられてしまうから条件反射で逃げる行動が進化した。

 

    高度成長した=日本は凄い、技術力があるは、何となく直感や感情で判断しているだけで、客観的データに基づいたものではない。三方よしの経営など独自の商慣習を指摘する声もあるが、何を根拠にそう言っているのか。

 

    日本の経営が素晴らしいのであれば、日本の2000時間で1%成長に対し、欧米は1500時間で2%成長と、これほど差がつくはずがない。労働生産性が低いのは、労働者の問題ではなく、マネジメントの問題。日本のマネジメントが悪いのは、データ重視ではなく、自分の経験や思い込みで判断しているからだ。

 

   以上がアトキンソンさんの主張だが、そもそもなぜ労働生産性が低いのか、その原因を私なりに考えてみた。

   

    ひとつは、何と言っても仕事内容と権限が曖昧。どのような労働契約で仕事をさせるのか会社と雇用者の意志疎通がないので、「部長指示だからとにかくこれをやってくれ」といつの間にか仕事が増えたりすること。外国なら「それは私の仕事ではありません」と明確に断るから、新しい仕事が出れば、人を雇うなど流動的に対応する。日本は仕事が増えても人は増えず、皆で頑張るなど根拠なき精神論に頼る雇用体制だから労働時間が増える。

 

     次に、だらだら残業。働き方改革で無くなりつつはあるが、つきあい残業や上司が帰らないと帰りずらい雰囲気の蔓延。さらに残業をした人の評価が上がるという魔か不思議な人事考課。

    外国なら、残業代はコストアップにつながり、会社に損をさせる。だから時間内で効率良く仕事をする意識につながる。逆に日本は滅私奉公の精神構造が未だ根深く存在し、給料のために働くのではなく、社長や会社のために働くことが目的になってしまっている。

 

    三つめは、みんなで仕事をする意識。一体感という形で表現されるが、Aさんが忙しければ、Bさんが本来業務ではないのに手伝ったり、電話が鳴って、手の空いている人が対応するなど、手助けしながら仕事をする文化がある。これが外国の場合は、電話が鳴っても、その人の電話は取らないという。人の仕事に関わらない、だから集中して仕事ができるというもの。協調性がないといわれればそれまでだが、そもそも外国人に協調性という概念は希薄。労働生産性を上げていくのに、協調性の良さはマストの要素ではない。

 

    根底にはキリスト教は、労働が悪とみる。だから欧米人はなるべく仕事しないよう、人生を楽しく生きる手段として労働があるとの考え。ある意味割り切っていて、あくまで家族中心の生活を考える。

    一方、日本人にとって労働は生きがい。しかも会社という組織に帰属することで、心の安寧を得て、家族をないがしろにしてまでも仕事中毒の人間を多数輩出する。そんな人間が上司になればパワハラの温床になる。さらに悪質なのは、会社べったりに生きてきたがために、定年後牙を抜かれた無気力な老人で溢れるという負のスパイラルに陥っている。

 

    こうした日本独特の慣習や風習があるがために、労働生産性を上げていくのは並大抵なことではない。経営者が余程ドラスティックに変えていかねばならないが、今の経営者は過去の栄光を引きずっているだけに余計難儀するであろう。個人のタスクや成果を重視しながら組織として成長戦略が練られるのか、今現在もはびこる「とにかく頑張れ」の精神論ではいずれ立ち行かなくなる。

 

    最後にこれが一番労働生産性を悪くしているのが「お客さまは神様」の精神性。世界一厳しいと言われる日本の消費者のニーズに答えるために、知らず知らずのうちに多くの時間を裂いている。例えばコンビにでも勤務時間が終わっているのに、客がレジ待ちしていると対応しなければならない。これが欧米だと、レジにお客が並んでいても、パートの時間終了と同時にレジを閉めるという、日本人には信じられない行為が普通になされる。多くのクレーマー対応も、基本的に生産性はない。日本の企業は、嗜好の移り変わりの激しい消費者のハートをつかむために日夜新商品の開発に励まなければならない。経営者が「すべてはお客さまのために」を唱える以上、その対応に費やす時間はボディブローのように効いてくる。この慣習がある限り、日本の労働生産性は決して上がらないだろう。

 

    労働生産性を上げるためにはどうしたらいいか。アトキンソン氏がいうように、精神論ではなく、ロジカルシンキング。あとはワークライフバランスを加味した「会社ファースト」ではない「自分ファースト」の倫理観。働くことが人生のすべてではなく、楽しい人生を過ごすことが目的であり、働くことはその一手段であることを多くの大人が考えるべきだと思う。

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「働く」は、はた(傍)を楽にするという説がある