今日の漢字425は「俳」。俳句文化から転じて、日本人の省略言葉について考える
今日の漢字は「俳」。俳句、俳人、俳号、俳壇。
日本語は俳句や川柳の文化と関係するのか、5音と7音の組み合わせで会話することが多いという。
おじさんは・あなたのことが・すきである。(5・7・5)
かあさんは・おなかがすいて・うごけない。
マンキツに・俺と一緒に・行かないか。
この5・7・5テンポが話しやすく、また聞き取りやすく、理解しやすい。
5・7・5のたった17語で世界観を表現する日本独特の俳句や川柳文化が、日ごろの会話においても、自然と5音、7音に導かれ、知らぬ間に使いこなしているのではないかと思う。
5音7音で伝えるリズム感を受け継ぐ形で大きな影響を及ぼしているのが、言葉の省略。
特に、事あるごとに4文字に簡略化する傾向が強い。それはなぜかというと、「○○○○は」、と言いやすいから。
京都アニメーションを「京アニ」と略して報道するのはその最たるもの。新聞では省略した方が字数を稼げるというのはあるが、あれほど悲惨な事件だっただけに、個人的には京アニとの省略は使ってほしくなかった。
それほど日本人は言葉を省略するのが好きな国民である。
具体的な省略のジャンル分けを考えた。
・歌手、タレント系・・プリプリ、松潤、オリラジ、キスマイ、キンプリ、こじるり、キムタク、セカオワ、ヒゲダン。
・スポーツ界・・バトミントンはオグシオ、タカマツペア。野球は「サムライ」ニッポン、女子サッカーは「なでしこ」ジャパン。
・西欧から輸入の英語の省略系・・サブスク、コンプラ、コンビニ、コンサバ、イタ飯。
・行動や外見の省略系・・シューカツ、バツイチ、イケメン、パワハラ、ゆるキャラ。
・ギャル語・・あけおめ、リア充、マジヤバ、チョベリバ、ときとば。
・企業系・・東電、厚労(省)、大ガス、サツドラ(サッポロドラックストア)、東スポ
・その他・・あつ森、酎ハイ、マル暴、漫喫、関関同立。
用例は限りなく続く。まあよくぞここまで短縮できるなと関心する。特に英語は省略してもそれが通用するところが凄い。外国人がこれを真似したら混乱するのではなかろうか。
日本人は漢字、カタカナ、ひらがな、外来語を日常会話で普通に使っている。特に漢字などは、「交渉」「高尚」「校章」や「擬音」「祇園」のように同音異義語の洪水の中にあって、聞き手は前後の文脈からその言葉を想像するという離れ業を毎日実行している。こうした複雑な言語使用に慣れている日本人の脳の回転レベルはおそらく他の国のレベルを遥かに凌駕していると私は確信している。しかし最近の若者は何でも「ヤバイ」で表現し、使用言語の少なさを嘆く評論家もいる。複雑だが豊潤な日本語をもっと使いこなせば、充実した生活につながる。
少し脱線したが、4文字化に簡略できる言葉は人々の印象に残りやすいということになる。新しい会社や商品にネーミングする上での参考になりそうである。楽天、ユニクロ、アマゾン。シンプルだが耳に残る。
逆にサイバーエージェント、ディアゴスティーニ、リリーフランキー、ユースケサンタマリアなどは省略しようにも省略不能。親しみを持たせるためにも、4文字短縮化を想定したネーミングをはじめから考えておくのも一考かと思う。
消費者の立場からは、新しい商品名や長い企業名などを見聞きした時に、これは売れるネーミングか、定着するネーミングか、そういうことを想像しながら世の中を見ると、また違った景色が見えてくるのではなかろうか。