今日の漢字431は「離」。能の「離見の見」と文章の関係性について考える
今日の漢字は「離」。離陸、離婚、離縁、離別、隔離、支離滅裂、離脱、離島。
リンボウ先生こと林望氏の著書「文章の品格」を読む。
文章を書く心得として、世阿弥の「風姿花伝」を引き合いにだす。
世阿弥は、能の観点から、3つの視点を説く。
「我見」。自分の側から相手を見る視点。
「離見」。相手が自分を見る視点。
「離見の見」。自分の姿を離れた所から客観的に眺める視点。つまり相手が自分を見ている目線で自分を眺める。
芸はひとりよがりではあってはいけない。
自分の姿を一度冷静に自己を離れ、見物人から見たらどう見えるかという立場に立って見直すのが良い。
文章の表現も同じ。ひとりよがりの文章は「我見」の視点である。第三者が見て面白い、ためになる、また読みたいと思わせる文章を書くのは難しいが、「離見の見」を念頭において文章を書くべきである。
あとは自分の個性を出したり、読み手が気づかない視点で語る。また、特異な雰囲気を出すことで、差別化を図っていくことが望ましい。
個人的には、離見の見で文章を書く視点では、まだまだ足りない所はあると感じているし、もっといろいろな物事に接して自分自身を磨いていかねばならない。さらに、他者とは違った視点で物事を見るクセをつけていかねばならない。
林先生は続ける。
「日々の会話も同じで、会話の中で自分の使う言葉がどういう風に相手に伝わるかを意識して使うのがいい。
良い文章を書くためには、話言葉を洗練させること。この文章は他人が読んだらどう思うかという視点が大事。
自分のことを知らない人が読んでおもしろいか。
文章とは自分の思いを他人に伝えるためのメディアであって、自分だけで感情を自得して喜ぶためのものではない」。
んーなかなか手厳しい。ブログやツイッターをやる人は、ほとんどが素人であり、文章で飯を食っているわけではない。
しかし自意識過剰な表現や、言いっぱなし、一人よがりの文章は見る気が失せる。自慢する文章を延々と見せられることほど面白くないのもまた事実である。
自分の書いた文章から、何を学んでもらうか、少しでもためになったと感じてもらえるか、また読もうという気分になってくれるか。
ブログやSNSは、読む人に向けての文章のプレゼントであり、何かひとつでも読者のハートに残るようなことが表現できるのであれば、この上ない幸せだと感じている。