笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字1039は「閑」。大行列の行く先は閑古鳥

今日の漢字は「閑」。閑散、閑居、閑暇、安閑、閑職。

 

常連を失うという現象がある。

 

 よく言われるのが、テレビの情報番組にかき回されるケース。お店がテレビで紹介されて、一気に有名に。そして多くのお客が殺到したがために、従来からいた常連さんが遠のき、その後ブームも終焉。新規のお客も常連さんも同時に失うという現象。大行列は数ヶ月ほどで、そのあとは閑古鳥が鳴く。最悪の場合は閉店に至る場合もある。

 

 人の嗜好性は移り気ゆえに、テレビ番組で放送されようものなら、次の日、そのお店は大繁盛となる。話題やトレンドに敏感な若者は、「テレビで紹介される=美味しい」、「最先端の話題を体験したい」、「SNSで発信したい」などの動機からお店に足を運ぶ。口コミからネットに移行した現代においても、その傾向は昔と変わらない。しかしメディアにしてみたら、最先端の流行を紹介するのが目的なので、紹介してあとのことは誰もフォローしない。そのあと流行ろうが、潰れようが、何の責任もない。テレビに出てその店も放送局もお互いにWINWINでもなく、流行を短時間消費するテレビ局だけが儲かるフォーマットなのかもしれない。

 

 こんなことがあった。いつも定期的に3人(私と女性2人)でランチをする店は、こじんまりした洋食屋で、美味しくて値段もリーゾナブル。テーブル席が4席ほどしかないが、混んでおらず、穴場的お店でよく利用していた。ただ混んでないとは言え、12時を過ぎるとすぐ満杯になるため、私がいつも11時45分くらいに先に行き、いつも席をキープしていた。お店側も席取りについて何も言わなかったため、それが当たり前となっていた。

 

 そんな折、そのお店が地元のテレビ番組で「おいしい洋食屋」として紹介された。途端に状況は一変。事前の席取りは不可能となり、テレビの噂を聞きつけた一見さんの行列を前に、我々のそのお店でのランチ会を諦めざるを得なかった。

 

 そして月日は過ぎ、ようやくブームも落ち着いてきた頃を見計らって、再度トライ。幸い行列はできておらず、私は11時50分には席に着き、2人を待った。

するとほどなく店員が寄ってきて「お連れ様はそろそろ到着されますか」と聞いてきた。

私は「連れは12時過ぎには来ますので」

店員「すぐに来られますか」

私「来ますよ」

店員は「(お客がこのあとたくさん来て混むのだから、早く来てくれないと回転が悪くなって困るのよね)」と言いたそうに不機嫌な顔をして帰っていった。

 

 テレビに紹介される前なら、こんなことはなく、自由に待たせてくれた。私は「ちょっと有名になったからそういう態度か」と心の中で呟いた。

 

 幸い2人の女性はほどなく到着し、いつものランチ会はスタートしたものの、私は本心から楽しめなかった。事の顛末を二人に話そうかと思ったがやめた。この件は今でも私の心の中に閉まっているが、気分の悪さは拭えず、それ以降、一度もその店を利用していない。

 

 ちょっとしたお店の対応に、私が拘りすぎなのかもしれないが、冒頭の話のように、これがもし常連さんなら、「冷たくされた」と感じるのではないか。店員に「早く来て食べろ」の意識は無かったにしても、「有名になって混んでいるからいい気になっている」とネガティブに受け取られる場合もある。アットホームないいお店だっただけに、残念であった。私はその店の常連というわけではないが、有名になることで、3人のお客を失った事例と言えるかもしれない。

 

 こうした経験をするにつけ、テレビで紹介されることが本当にいいことなのか、テレビ局の身勝手な動きに翻弄される店も多いのではないかと、一人危惧しているのである。

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小人閑居して不善をなす