今日の漢字918は「基」。基本型というキャバクラの接待があった
今日の漢字は「基」。基礎、基盤、基地、実話に基づく映画。
普段あまりエッセイでエッチなことを書くことはないが、たまにこういうのも書いてみたいと筆を進める。
それは15年以上前のススキノのお店。今はもうその店はないから、こうして書けるというのもある。
その店は特別エッチで過激なサービスがあるわけではないが、会社の同期入社の同僚から「ぜひ行こう」と誘いを受けた。
聞くと、それはキャバクラ。さらにしつこく聞くと、10分1000円の明瞭会計らしい。
「ズボンは下ろすのか」と聞くと、「そんなわけないだろ。それじゃあ10分1000円は安すぎるわ」。「じゃあ何するの?」「お姉ちゃんとお話をするのに決まっているだろう」
「1時間6000円なら、そんなもんか。世間話や雑談してお酒を飲んでその値段ならまあまあか」私は同期とそのキャバクラに潜入した。
店の名前は「M」。2階の店のドアを開けると、小綺麗なフロアにボックス席が整然と並ぶ。カラオケはないが、フロアに音楽が響く。
我々2人に、歳は20代前半とおぼしきミニスカートをはいたホステスの女性が二人つく。「いらっしゃいませ〜」と言い、店のシステムを説明。水割は飲み放題。1時間で6000円で、時間が来たら延長するかどうかを決める。ホステスの飲み物は別料金。ただし、払わなくてもいい。我々ははっきりと「1時間コースの6000円ポッキリコースで」と女性に伝える。ホステスは表情を曇らせることもなく、フロアの男性に耳打ちし、ほどなく我々に水割りが、ホステスには烏龍茶が運ばれてきた。おそらく「女性の飲み物込みで」とオーダーすればホステスにはビールが運ばれてきたのだろうが、ケチな我々は「そうは問屋が降ろさない」姿勢で臨んだ。
4人で水割りと烏龍茶で乾杯。最初の喧騒が落ち着き、ホステスとの1対1の会話が始まる。といっても「最近はお客さん多いの?」など他愛もない会話から始まるが、急に話が盛り上がるはずもない。
そうこうするうちに、隣に座るホステスが、おもむろに反対側の足を私の右足の上に乗せてきた。要するに足を組むようなポーズで、ホステスが組んだ右側の足が、左に座る私の右足に乗っかってきた。「?」と訝しがって、向かいの同期を見ると、同じようなポーズをとっていて、私に向かって親指を立てた。
「何このポーズ」と聴くと、「これがお店の基本型なんです」とのこと。足を密着させて接近することで、親密さをアピールし、会話を楽しいものにするお店の方針なんだとか。
「これってサービス?でもこれ以上の怪しいサービスはないんだよね」と確認すると、「サービスここまでです」と淡々と答える。しかし、太ももを載せられて密着していると、何だか気持ちがいいし、ミニスカートの裾に視線が行ってしまう。自然に会話をするのがぎこちない。会話を楽しむというよりは、太もも同士を絡めた不思議な状態が1時間続いた方が正解という感じだった。
ふわふわした感覚が続き、あっという間に1時間が経過。延長はせず、会計はきっかり1時間の6000円プラス消費税。店を出て、同期から「どうだった。いい社会勉強になっただろう」と聞かれるも、「お触りするわけでもなく、中途半端な体勢でなんだか欲求不満に終わったわ」とため息をついた。
そのお店「M」は、「基本型」という不思議な接待方法が男連中に受け、結構繁盛していた。私もなぜか懲りずにその後2、3回通った。ススキノという場所は摩訶不思議なお店やサービスがある伏魔殿なのだ。
残念ながらそのお店はとうの昔に無くなったが、もし復活したならば、もう一度再訪してみたいと密かに思っている。