笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字1023は「埋」。サンクコスト(埋没費用)について考える

今日の漢字は「埋」。埋没、埋葬、埋設、埋蔵。

 

 ギャンブル好きの知人がいるが、ほぼ毎日のようにパチンコ通いである。休みの日には開店から閉店までいるというから、まさに依存症。本人はいたって悪びれる様子もなく、「趣味だからしょうがない」と大損しても全く辞める気配はない。奥さんも家計を破綻させるわけでもなく、自分のこずかいの範囲でやる分にはお咎めなしのようである。

 

 「わかっちゃいるけどやめられない」でパチンコに嵌る心理状態は、行動経済学でいうところの「サンクコスト」、(埋没費用)の回収にこだわるから。要するにそれまでに支払った、もはや回収できないお金(サンクコスト)を回収しようとこだわるのである。

 例え話でいうと、フランスとイギリスが共同開発した超音速旅客機「コンコルド」。当初から収益化は難しいと言われていた。しかし事業主は少しでも収益を得ようと運航を続けた。莫大な開発費をかけたがためにサンクコストの回収を目指したが、高燃費や騒音問題に悩まされ、さらにお金がどんどん継ぎ込まれる悪循環に陥り、運行を終了した。

 

 企業などでも新規商品開発に莫大な投資をしたものの、思ったように商品が売れず、撤退するか継続するかが議論になる。そういう時に限って「せっかくここまで投資したのだから簡単には引き下がれない。事業は続けるべきだ」と継続派に押し切られて傷口をさらに広げる例もある。

 

 合理的に考えれば、収益化が認められない事業はやめるべきなのだが、心の働きがそれを邪魔する。何かの本で読んだが、日本人は得てしてサンクコストを考えがちだが、欧米の企業は「儲からなければ、さっさと撤退する」戦略をとるという。2000年に鳴り物入りで幕張などにオープンした外資系スーパーのカルフールは、日本でのビジネスに苦戦し、わずか5年で撤退した。

 勇気ある撤退ができるかどうか、サンクコストは勉強代や未来の投資と割り切って損を引きずらないか、判断は難しい。

 

 最初のパチンコの話では、別の知人は学生時代、ビギナーズラックで、初めて打ったパチンコで大当たり。その成功体験が忘れられず、毎日パチンコ屋に通う。しかしうまい話はそう続くわけもなく、連戦連敗。懲りずにサンクコストの回収にこだわりパチンコ屋に通い続けた結果、赤字が膨らみ生活費にも困ることに。そこでようやく彼は夢から覚め、もう二度とパチンコはしないと、きっぱりと足を洗った。そういう勇気ある撤退を自ら選択し、泥沼に足を突っ込むことを回避した。賢い選択であったのだが、そこまで割り切れる精神力も凄いと思う。

 

 私もギャンブルはやらないが、パチンコや競馬、宝くじなどで得たお金で家を建てた例を聞いたことがない。胴元が儲かるから街中にパチンコ屋が溢れるわけであり、冷静に考えれば確率論で損をすることは明確。一度おいしい思いをさせ、それが長く続くような幻想をもたせる今のギャンブルは、人間の弱い心理に付け込んだ詐欺だと個人的には思っている。

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徳川埋蔵金ブームが昔あった