笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字1024は「惧」。ウミガメは絶滅危惧種

今日の漢字は「惧」。危惧しかない。

 

「ウミガメは100キロ先で恋をする」(菅沼弘行)を読む。

 そもそも、なぜウミガメに興味を持ったかというと、以前読んでいた本「無人島に生きる16人」(須川邦彦)がきっかけ。船が難破し、船員がたどり着いたのは無人島。生き延びるために彼らは浜辺にいたウミガメを生け捕りにして食べる。そのウミガメをとても美味そうに食べるシーンが印象に残っていた。そんな背景から、ネットでいろいろとウミガメについて調べていたところ、この本にいきついた。

 

 この本はひと言でいうと、ウミガメの卵を守るドキュメンタリー。

 ウミガメはレッド・データーブックに載る絶滅危惧種である。

 著者は、世界中のウミガメが絶滅の危機にあることを憂い、なんとかウミガメを保護しようと、ウミガメの聖地、小笠原島に赴き、ウミガメの保護をライフワークにする。さらに世界中のウミガメの産卵地に赴き、ウミガメが無事孵化し、稚ガメが大海原に旅立つ姿を支える。

 

 爬虫類のウミガメは、世界に7種類いる。そのうち日本には3種類。アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイの3種類。他にはオサガメ、オリーブヒメウミガメ、ケンプヒメウミガメ、ヒラタウミガメが世界中の海で泳ぐ

 

 ウミガメが激減している理由は、いくつかある。

 大航海以降、食用として重用されてきたこと。特に捕鯨が盛んになると、ウミガメを捕獲して食料とされることが多かった。

 現代においては、はえ縄漁による乱獲。マグロやサケを捕獲するためのはえ縄にウミガメがひっかかることがよくある。

 そして今一番の問題が、繁殖地で行われている卵の盗掘。海外では卵が盗まれ、それが商売のネタになる。中にはウミガメの卵で生計を立てる者もいて、なかなか盗掘が無くならない。

 さらには、他の動物からの捕食。よしんば孵化して稚ガメが海に向かって歩き始めても、それを待ち構えたように野生動物に攻撃される。中には、砂浜を走る車に惹かれるケースもあるという。

 

 そもそもウミガメの生存率は5000分の1。大きくなって帰ってくる確率はとても低い。卵の孵化率が下がれば、個体数は自然と減少するのは目に見えている。

 

 そんな現状に著者は奮い立ち、生息地の小笠原のみならず、インドネシアパプアニューギニアまで赴き、盗掘者を見張ったり、野生の豚が卵を食べないよう電気柵を張ったり、稚ガメを人工孵化させて放流したりと、涙ぐましい努力を重ねる。まさにウミガメを絶滅から救うことを人生の目的として取り組んでいる。著者は45年にわたってその仕事を続けてきたというから凄い。我々はせいぜい水族館で飼育されているウミガメを見て歓声をあげるくらいだが、世界ではその保護に情熱と人生をかける人がいるのだと知り、ウミガメへの見方が変わった。ウミガメに限らず、人間はもっと野生動物をリスペクトし、共存共栄を図っていかねばならないのだと、考えを新たにした。

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危惧の類義語は憂慮