今日の漢字970は「台」。寝台列車の思い出
今日の漢字は「台」。台車、台座、台湾、台本、展望台。
寝台列車の思い出。今や日本では、東京〜出雲市のサンライズ出雲くらいしか夜行寝台列車はなくなった。以前は多くの寝台列車が走っていたから、のんびりゆっくり旅が減り、スピードと効率重視になってしまった風潮と、それをよしとするJR各社の鉄道経営には残念である。だがこれも時代の流れだからしょうがない。
記憶に残る寝台列車と言えば学生時代に乗った寝台急行「日本海」。青森と大阪を結び、日本海沿岸沿いを南下する。その日本海に、実家のある北海道から大学のある京都に帰るために1度だけ乗車した。2段式ベッドが向かい合わせに並ぶA寝台に投宿し、ビールを飲みながら京都までの道のりを楽しんだ。
家族を持ってから、妻と一度は乗りたいと念願叶ったのが、カシオペア。JR北海道は北斗星、JR東日本はカシオペアを運行。家族5人で個室2部屋を予約し、札幌から青函トンネルを抜け、上野までの汽車旅を楽しんだ。この列車には最後尾に展望ラウンジがあり、通ってきた線路の跡をぼーっと見ていられる。嬉しかったのは、朝、首都圏に入り、宇都宮や大宮など主要駅に停車するたびに、向かいのホームで電車を待つ大勢のサラリーマンの姿を横目で見ながら、こちらは優雅に寝台列車の旅の優越感に浸れたこと。ホームの溢れんばかりの人波と比較し、こちらはのんびりと車窓を眺めれることに、「貴族になったようだ」と一人悦に入っていた。
最後にヨーロッパでの思い出。鉄道網が発達したヨーロッパは、国を跨いで寝台列車の本数も多かった。学生の卒業貧乏旅行の私は友人2人と寝台列車を効率良く乗り継ぎ、宿代を浮かせていた。最もインパクトがあったのが、ドイツからデンマークのコペンハーゲン行きの寝台列車。ドイツ(どの都市だったかは忘れた)を夜経ち、朝目覚めると、なんだか揺れている。揺れ方がおかしいなと思っても、電車は止まっている。窓の外を見ると、何列もの列車の車両が見える。外に出られるドアを開けると、なんと船の中。ドイツからデンマークへは海を渡らねばならず、列車ごと船に積まされ、そのまま運ばれたのであった。船が列車ごと丸呑みするヨーロッパのスケールのデカさに圧倒された。
こうして思い起こすと、もう一度寝台列車に乗ってみたい気持ちがむくむくと持ち上げてきた。飛行機でわずか2時間で行けるところに、わざわざ寝台で何時間もかけて移動するのは、時間効率からすると無駄。だけど旅そものものプロセスを味わうのも醍醐味のひとつ。心の滋養強壮をもたらすのは、時間に縛られずに物思いにふけながら揺れに身を任せることだと最近思うようになっている。