笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字969は「脚」。脚光を浴びることは大変だ

今日の漢字は「脚」。三脚、脚線美、橋脚、健脚、行脚、脚気

 

 今まで、当然のことながら、脚光を浴びたことも、スポットライトも浴びたためしもない。一般人だから当たり前だが、無名の作家がいきなり直木賞芥川賞文学賞を受賞した途端にスポットライトを浴びることはよくある。

 

 何にかの雑誌で読んだが、文学賞の選考で、甲乙つけがたい作品が並んだ場合、最後は「学生」か「主婦」の作家を選ぶことが暗黙の了解事項だとか。思い起こせば綿矢りさ早大在学中に芥川賞を受賞したし、若竹千佐子は63歳の主婦。苦節何十年、ずっと小説を書いてようやく候補になった、もっさいおじさんよりも、主婦や学生の方が話題性があって良い。そもそも文学賞は出版社や書店が本を売るために創設した賞だから、商業主義に陥るのは致し方ない。お笑い芸人の又吉が受賞したのも、知名度があってのこと。ある意味出来レースだったかもしれない。受賞した「火花」は累計で300万部を越えたというから、出版社はホクホクであろう。ほぼ無名の苦労人おじさんや、ひきこもり作家に賞を与えるよりは、よっぽど本が売れるという算段である。

 

 ところでこれもどこかで聞いた話だが、文学賞を受賞すると、その作家の元には軒並み出版オファーが殺到する。各社とも金の卵は放っておけない。本の売上を伸ばすためには、二匹目、三匹目のどじょうを狙うハイエナ状態となる。だから、出版社の上司は部下の編集者に、「何でもいいからセンセイに作品を書いてもらえ」の号令が下る。

 

 受賞したその作家は逆に、出版社の要請に対し、受賞した作品と同じくらいのクオリティで次々と刊行できるかが勝負。それによってさらに作家の知名度が上がるとともに、本が売れる相乗効果が生まれ、作家も出版社もウィンウィンとなる。だからよく言われるのは、とにかく賞を出した次の作品、さらにまた次の作品が重要になる。「受賞がスタートであり、勝負どころ」なのだ。ここでいい作品が生み出せなかったり、筆が止まると元の木阿弥となり、読者から忘れ去られる。新刊本の帯で「直木賞受賞第二弾」とか、「芥川賞作家2作目の意欲作」などの文句は、作家をさらにメジャーにするか、売れない作家の戻るかの分水嶺である。

 

 文学賞受賞後の作品連発例は例えば、「チーム・バチスタの栄光」で「このミステリーがすごい」大賞を受賞した海堂尊。また、「告白」で本屋大賞を受賞した湊かなえ。この二人は受賞直後の2作目以降、もの凄い勢いで小説を上梓していった。文学賞の受賞を機に時流を察知し、忘れ去られないように連発出版したことで一定のファンがついたほか、映画化もされ一般読者も取り込み、今や安定銘柄となっている。

 

 作家で食べていけるのは、ほんの一部という言い伝えがある。印税で食べていけない作家がほとんどではあるが、毎年多くの文学賞に応募する人たちは「いつかは脚光を浴びてまともに先生と呼ばれたい」と思っている。それでたまたま運良く受賞する人もいれば、全く芽が出ず、ひっそりと廃業する人もいる。実力の世界とはいえ、筆力で読者に感動を与え続けるのは本当に大変であるとともに、選考委員のハートを捉える運の要素も大きいのではないかと、他人事ながら感じている。

 

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国会議員の失脚を喜ぶ人は多い