今日の漢字481は「下」。臭い靴下を思い出す
今日の漢字は「下」。下心、却下、下品、下級生、低下、降下、卑下、下準備、下田市、下平さやか。
靴下の思い出をふたつ。
普段から滅茶苦茶足の臭い友人がいた。
靴が臭いから、当然靴下も臭い。まわりに匂いを撒き散らしており、当然本人もそれは自覚している。だから、靴を脱いだ部屋で雑談をする時は、必ず彼は靴下を脱いで裸足になった。靴下は当然、他の人の人目のつかないところに、匂いを発散しないよう、丸めて置かれていた。そんな人に迷惑をかけまとする、彼なりの配慮に、何となく彼の愛らしいキャラクターを感じたものである。だが、その前に靴を買い換えろとは言えなかった。
私の靴下臭い事件。
学生の卒業旅行の男2人でヨーロッパに行ったときのこと。
ホテル代をケチるために夜行列車によく乗った。スペイン南部の街グラナダ観光を終えたのち、夜出発して朝パリに着くスペイン国鉄の夜行列車に乗った。
寝台は併設されているものの、我々は貧乏旅行であったため、2等コンパートメントをねぐらにした。
よく映画に出てくるが、ヨーロッパの長距離列車はコンパートメント方式の個室で、日中は3人がけの席に最大6人が向かい合わせで座るが、夜行の場合、両方の椅子の座面が手前にせり出し、背もたれも倒れてフルフラットになる。この場合は最大3人までが横になって寝られるなかなかの優れもの。日本のように座席に座って寝ていくよりははるかに楽。
しかも寝台分の追加料金がないから、貧乏旅行をする学生などは、宿代を浮かせるためよく2等のコンパートメントで寝泊りをした。まあ若いから夜行列車が苦にならなかったというのもある。
私と友人は最初その部屋を2人で占拠していたが、途中駅から1人のフランス人が我々のコンパートメントに乗り込んできた。
我々は既に横になっていたから、カタコトの会話により、少しスペースを空け、その外国人が寝られるスペースを確保。ただし、列車の進行方向に対して垂直に川の字で3人が寝るものの、大人3人はとても窮屈なため、同じ方向に顔を向けると物凄く至近距離となるから、私と友人の2人は同じ方向に顔を向け、フランス人は我々から顔をそむけ、反対側の我々の足側に顔を向けて寝た。
しばらく寝ていると、ん、なんか臭いな。おっと私の足が臭い。今日も日中はグラナダのアルハンブラ宮殿などを歩き回り、靴はむれているし、シャワーにも入っていない。
そうか、靴下が臭くて、私の足が臭いのだ。
と、私の足の先にはフランス人男性の顔がある。
やばい、今でも自分の足が臭いのがわかっているのに、彼の鼻先はもっと臭いはず。
しかし、この状況を何と英語で説明すればいいのか。んー無理。このままやりすごすか。
一旦起きて、靴下を脱いだ方がいいのだろうか。悩む。
悶々として、眠れるはずもない。
さすがにフランス人も寝付けていない雰囲気。友人も気が付いてはいるのだろうが、見てみぬふりをしている様子。
私は耐えられず意を決してガバッと起き、「ソーリー、スメール、バッド」と訳のわからない英語を発し、そしておもむろに靴下を脱ぎ、靴下を脇に追いやって裸足で再度就寝した。暗闇の中でフランス人が苦笑している雰囲気が伝わった。やれやれ。
さすがに裸足では匂いはない。フランス人も我々も安眠してパリに向かったのであった。