笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字962は「値」。誰にも頼らない自らの価値観を見出そう

今日の漢字は「値」。数値、期待値、値段、賞賛に値する。

 

 劇作家の平田オリザ氏は「わかりあえないことから」の中で、「成長型の社会から成熟型の社会への移行」について述べている。富国強兵、戦後復興、高度経済成長と国や社会が成長するにつれ、「幸せであること=モノに囲まれて生活すること」が目的化していた。そのために子どもは親の言うことを聞き、いいい大学、いい会社に入り、上司の言うことを素直に聞いて仕事をすれば給料は上がり出世し、ボーナスも出て車や家が買えた。私たちはそれが幸せのモデルだと信じて突き進んできた。

 

 しかしバブル崩壊リーマンショック、度重なる震災や企業不祥事、政治の停滞で「失われた20年」を経験し、それらが幻想に過ぎなかったことを痛感する。国も社会も企業も自治体も労働組合も宗教も、決して我々を守ってくれる存在ではないことに多くの国民は気付いた。

 

 そして今はそうしたことに頼らずに、自らの判断で生きていくことに舵を切らねばならない、成熟した社会に生きているのだと述べる。

 

 これからの成熟社会のひとつのキーワードは「価値観の多様化」だと思う。昭和・平成の時代なら、「将来は出世して、ゆくゆくは役員や社長に」という大勢の社員がいたが、今は「定時に帰って家族とゆっくり過ごしたいから出世は望まない」「土日は完全に休みにしたいから、管理職でなくていい」「アフター5は自己啓発や社会奉仕活動に充てる」など、会社や上司のために滅私奉公する社員は絶滅危惧種と化している。その背景には、給料はもはや右肩上がりにならない現実があり、得られる給料の中でいかに充実した人生を過ごすかに考えがシフトしている。「会社のために働き蜂となって一生を捧げるなど馬鹿らしい」と考える社員が多くなりつつあるのは、価値観の多様化の一種だと考える。

 

 最近、就活サイトや転職サイトを見る機会が多いが、口コミの評価で多いのが、「この会社では自分の成長につながらないから辞めた」とか、「会社の成長が全く感じられないから転職を考えている」という書き込みが多い。昭和の時代なら、「成長などと言っている暇があったら、つべこべ言わずに仕事しろ」と言っていたかもしれない。高度経済成長ビジネスモデルのように、会社の言う通りにマニュアルに沿って黙々と働くことが良いとした時代は終わった。個々人が自分の判断で、「この会社は将来どうなのか」「この先も一緒に成長できるか」を冷静に評価分析し、そうではないと判断したら、あっさりと会社に見切りをつけることも普通となってきた。「会社からの価値観の押し付け」ではなく、「自らの価値観に合った会社を選ぶ」多様性が今の社会の特徴ではないかと思う。

 

 今や万人がおしなべて幸せになるモデルなどない。自らの価値観を見つけ出し、自分なりの幸せモデルを作り出すことが、現代の成熟社会を生き抜くひとつの知恵なのだと思う。

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売り値は半値がいい