笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字758は「万」。万引きは危うい響き

 今日の漢字は「万」。億万長者、万雷、波乱万丈、千差万別。

 

    万引きという言葉は危うい響きがある。ある本で読んだが、本屋で1冊の本を万引きされると、その1冊の本の利益を確保するために、本を4冊売らなければならないという。店主にとって万引きは死活問題なのだ。
そんな万引きにまつわるお話し。

 

   私は大学生の頃、ある女性アイドルタレントにハマっていて、そのアイドルの載った雑誌やらブロマイドやら雑誌の付録で付いたポスターなどを集めまくっていた。愛読書はもちろん「BOMB」。当時は彼女いない歴〇年のヲタク青年であった。

 

   そうした中、あるレコード店にそのアイドルのポスターが張り出されて、それがどうしても欲しくなった。ポスターは非売品で当時、あちこちで盗難事件がおきていた。

    今でもジャニーズなどのアイドルグループのポスターが店頭から消えて無くなる現象はあるが、当時も血気盛んな若者がポスターを万引きし、家に持ち帰って堪能する格好のターゲットとなっていた。


   私もそのポスターを何とかゲットしたいと虎視眈々と狙ってはいたが、その店はとてもポスターを盗むことができるような雰囲気ではなかった。
指を加えて見ていてもしょうがない。そこで私は銀行強盗ならぬポスター奪取計画を立てた。

 

   それは、レコード店の店員の目を盗んでまずは人知れず何気なくポスターを剥がす。そして下に落ちたところを何食わぬ顔であたかも拾いものをしたかのように手に取って、そのまま立ち去る。そんなイメージを膨らませた。


    決行の日、そのレコード店に行き、しげしげと現場を確認。ポスターと店員の位置を確認し、どこかに死角はないかを考える。店員は、時たま店内のBGM用にレコードをかけるため、奥に引き込むことがあった。その時に、ポスターを剥がす手がある。
    レコードを探すフリをしながらチラチラ店員を見る。しかしその日店員はレジカウンターから微動だにしない。あまり長居すると怪しまれる。
緊張して手に汗をかいてきた。「今日はしょうがない。次回に決行しよう」と諦め、何も買わずに店を出て、捲土重来を期すことにした。

 

    数日後、満を持してそのレコード店を再訪。今日こそはと意気込み、中に入ると、お目当てのポスターがない。
    私は疑問に思う反面、そのポスターがどうなったか、とても気になった。
    私は、店員にその行方をどうしても聞きたくて、あまり買う気が無かった歌手のEPレコード(小さいレコード)を仕方なくカウンターに持っていき、さりげなく、「あそこに貼ってあった〇〇のポスターって剥がしたのですか。もしかして売れたとか」と聞いた。


    店員は、「あーあのポスターね。あれ盗まれたわ」とポツリ。「全国で盗まれていたことは知っていたけど、まさかうちでも盗まれるとはねー。まあ売りもんじゃないから別にいいけど」と悔しさを見せるわけでもなく、淡々と答えた。

    私は先を越された悔しさに腹立たしかったが、上には上がいるものだと感心した。結局ポスター万引き事件は未遂に終わったのであった。

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長万部カニ飯が有名