笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字727は「極」。北極海上空を飛んでいた時代があった

今日の漢字は「極」。極力、極限、極端、月極め駐車場。

 

   地球温暖化でなにかと話題の多い北極。その思いを振り返る。

 

   学生の卒業旅行でヨーロッパに行った時代は、まだソ連という国が存在していた。米ソは冷戦の真っただ中。1983年には大韓航空機がソ連の戦闘機に撃墜される事件もあり、一触即発の緊張関係が続いていた。当然ながらソ連領空内は飛行できないから、アメリカ経由となる。そこで給油のために一旦アラスカのアンカレッジに向かい、そこで降ろされる。つまり成田発パリ行の航空機は、直接フランスに飛ぶのではなく、一旦アンカレッジに飛んで給油のため乗客は降ろされ、空港内の待合室で待機する。そこまでのフライト時間は8時間くらいだったかと思う。1時間空港で待たされるが、空港の窓から見えるアラスカの大地は殺伐としていて何もない。冷たい景色がぼーっと広がるだけなので、あっという間に飽きる。

 

   ふと待合室の片隅を見ると、立ち食いそば屋があるではないか。アラスカに立ち食いそば屋。アラスカに暖簾は似合わないシチュエーションで、お客さんもまばら。それはそうだ、8時間前に日本を出たばかりだし、機内食も食べた。いくらパリまでのライト時間があると言っても、今はそばを食べるタイミングではない。そう白けて見ていた。しかしこの考えは間違っていることにあとで気づく。その2週間後、パリから成田への帰国の際のアンカレッジ空港のそば屋は大繁盛。日本帰国を前にして、乗客は懐かしいそばの匂いに引き付けられ、そばを堪能していたのだ。私もパリ行きのアンカレッジ空港では鼻白んだが、帰国時のアンカレッジ空港では、懐かしさに思わずそばを食べてしまった。

 

   飛行機はアンカレッジからパリまでは北極海上空を飛ぶ。最初私はワクワクしたが、あまりの眠さと、ただ白い氷の海と雲しか見えない単調さに飽き、何の感動もなく爆睡してしまった。アンカレッジから8時間の飛行時間で、パリに着く頃にはへとへとだった。

 

   私の兄はその5年以上前に(大韓航空機が爆撃される前)ヨーロッパに行ったが、その時は南回りルートという、もの凄く時間がかかるルートをとった(その分、アンカレッジ経由よりもかなり航空運賃は安いが)。

    詳細は忘れたが、成田~香港~バンコクニューデリー~ドバイ~パリというようなルートだったと思う。そのたびに空港で待たされ、乗り継いでいったという。40時間くらいはかかったと思うが、体力がないとできない技だと思う。

 

   ソ連という共産主義国が崩壊し、ロシアという民主化された国ができてて以降、日本からヨーロッパへ行く飛行機はロシア上空を飛べるようになった。だからわざわざアンカレッジや東南アジア、中東を経由して行くことがなくなり、随分と楽になった。飛行機は狭い機内に閉じ込められるから、フライト時間が短いのはとてもありがたいことであるが、もう二度と北極海上空を飛ぶことがないと思うと少し残念である。

f:id:laughing-egao:20210510191534j:plain

極道映画が最近はない