今日の漢字585は「儀」。日本人の行儀(マナー)について考える
今日の漢字は「儀」。祝儀、地球儀、儀式、儀礼。
マナー、いわゆる行儀について考える。
以前、会社の出張で中国に行った時のこと。
現地の役人と会食する機会があり、魚料理を食べた。
すると、彼らは魚を崩したあとの骨を食べながらもポロポロとテーブルの下の足下に無造作に捨てだした。だから足下には魚の骨が散乱。彼らは何食わぬ顔で魚を食べている。
同行した通訳に聞くと、テーブルにはいろいろな料理で満たされるから、骨の置き場に困る。だからどうせ捨てるのだから、床に捨てても問題ない。
あと、足下が骨で一杯になるくらい美味しく魚が食べられたということで、コックへの賛辞なのだ。と話した。
それにしても、綺麗好きな日本人からしてみたら何ともだらしないし、片付けるのが大変だと、店の人が大量の魚の骨を掃除している姿を想像してしまった。
このように、日本人からすれば信じられない行為も、中国人にとっては別に行儀が悪い行為でも何でもなく、毅然としたローカルルールなのである。
これは日本にも当然ながらある。
今やコロナで海外に出店している日本料理店も苦境かもしれないが、その前までは、特にラーメン店などはどこの国でも大盛況と聞いた。
以前、パリだかロンドンだか忘れたが、進出した日本のラーメン店に長蛇の列。
店主はテレビのインタビューで自信満々に、「日本のラーメン文化ここで広めます。そのために外国人にもラーメンをより一層味わってもらうため、日本の「麺をすする」文化を広めるんです」と息巻いていた。
日本人の麺類、そばやラーメンを食する時の独特の食べ方「すする」行為。すする行為は、その瞬間、空気が口に入って麺の旨味が増すというもの。
日本人は小さい頃からその技を体得するが、外国人にはそれが出来ない。つるつると食べることができないから、ラーメンを食べるのにもえらく時間がかかる。
今でこそないが、外国で日本人が蕎麦を食べるようにパスタをズルズルと音を立てて食べ、周りから顰蹙をかっていた。外国では食事中に音を立てて食べるのはマナー違反だから、白い目で見られるのは当たり前である。
では、ラーメンをズルズルすするのはどうか。
私は外国人にそれを奨めるのはお門違いだと思う。
日本の中華料理店で、本国では習慣や流儀だからといって魚の骨を下に放り投げるか。
絶対にしない。日本のルールに従うはず。
ある説によると、ラーメンをすする音は、外国人にとっては、ガラスをキーと引っ掻く音と同じくらい生理的に駄目な音に分類されているらしい。ほとんどの外国人は、すする音を聞きながら食事するのは絶対に無理だと主張する。
食事中に音を立てないマナーは世界的なマナー。それを根本的に無視して、只単に「美味しくなる」からといって、ラーメンをすする行為を強要するのは日本人のエゴだと思う。
日本だけで通用するマイナーなマナーを世界に広げようとするのは奢り以外の何ものでもない。日本の常識は世界の非常識である。
そんなことを考えつつ、食堂でランチをしていると、隣でえらく大きな音を立ててそばをすする中年男性の音が気になった。自分がすする時は気にならないものだが、人が食べる音は妙に気になった。
一瞬外国人になった気分で冷静に聞き耳を立てると、ズズズという音は、食事中に聞く音として、決して気持ちのいい音ではない。
最近では下火になったが「日本は凄い」報道に勘違いして、何でも許されるという上から目線の行動にそろそろ気づき、異国の地で自国のマナーを強要するような愚行はやめた方が良いと思う。>