笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字708は「葬」。最近は直葬が増えているらしい

今日の漢字は「葬」。葬送、埋葬。

なかなかこの漢字を笑顔漢字にするのはしんどい。

   少子高齢化社会の到来ばかりが嘆かれているが、実はこれからは多死時代である。これから戦後のベビーブーマー団塊の世代が高齢化する。それにより当然のことながら死亡者数が増えていく。

 

  2006年度の出生者数は110万人。死亡数は109万人とほぼ同数。しかし2040年の予測では、出生数70万人に対し死亡者数が160万人と激増。死亡者数が大幅に増えることが予測されている。つまり今まで以上に多くの人が亡くなる時代である。

   そのときの問題点で指摘されるのが、孤独死。伴侶に旅立たれたり、身よりが無かったり、家族と疎遠だったり、地域社会に溶け込まない孤独な老人が亡くなると、誰にも知られずに放置される可能性がある。死後何日も経てば、腐敗し、その処理も大変な作業となる。

 

   特殊清掃業という職業があり、そうした孤独死したあとの部屋の清掃を請け負うようだが、その際の悪臭は物凄いらしい。遺体自体は警察が引き取ったとしても、腐敗した後に残る蠅やうじ虫、さらにはこびりついたカビの臭いは耐えられないくらいだという。

   だからやりたがらない業者が多い。遺品整理業という職業もあり、こちらは亡くなった人のさまざまな遺品を処分したり売却する仕事で、その需要は高まる一方だという。しかし特殊清掃は、その内容が内容だけに、なかなか手がける人がいない。マンションの場合はその階だけでなく、エレベーターまで匂いが行き渡るというから、凄絶な現場となる。同じ階に住む住民にとっては迷惑以外何ものでもないが、住民同士の交流がないと、こういう結末を迎えることになる。

 

   また、最近はお葬式もお寺であげるのではなく、直接火葬場に行く直葬が増えているという。今や首都圏では3組に1組が直葬だというデータもある。火葬場もそうした人の増加により、本来閉鎖するはずの友引にも開場するという。まさに多死時代の対応が求められる。

 

   これからの高齢者の問題は、「孤独死」「認知症」「老人の犯罪」が大きな社会問題になっていく予感がする。

   認知症はかなりの症例や対応施設の社会インフラが整いつつあるが、孤独死の問題は、なかなか社会では解決しにくい。核家族化の進行が大きいが、子供たちと疎遠になっていくと自然と孤独になる。子供がいるのはまだいい方で、独身のまま高齢になると、孤独な生活が待ち受ける。老人ホームに入る経済力があればいいが、そうでない人は孤独死の予備軍となる。

   こうした実態はなかなか明らかにされないし、陰で淡々と進行しているのかもしれない。

 

   長生き時代と喜ぶのはいいが、死に対する意識が遠のき、ひとりで何でもできる幻想に縛られるうちに体力がなくなり、取り返しのつかないことになりかねない。

   ひとりで暮らすことは、それが将来的にどうなるのか、どのように影響を及ぼしていくのか。それを想像しながら多死化時代を生きていく必要があるのかもしれない。

参考文献:無葬社会 鵜飼秀徳

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闇に葬られる悪