笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字642は「納」。高齢者の免許返納はお早めに

今日の漢字は「納」。納入、納期、収納、納品、納涼。

 

    高齢者の自動車運転事故が無くならない。

    先日もコンビニの店内に車が突っ込んだニュースをやっていたが、ブレーキとアクセルを踏み間違ったのは、70代の男性。また高齢者の事故かと思う。池袋で80代の男性が運転する車の暴走で妻子が亡くなった事件は記憶に新しい。

 

   わが家の実父、実母の免許返納も、80代を前に何とか説得できたが、俺はまだ大丈夫だとしてハンドルを握る高齢者は後を絶たない。

    自分のことをどう認識しているかを、心理学の用語で「メタ認知」という。

 

   老人は、「自分は有能である」というメタ認知を持っている。有能感が高いということは、「自分は無事故無違反の優良運転者だ」「自分は運転が上手だ」「自分はまだまだ衰えていない」「若い者には負けない」と思っている。

 

   警察白書によれば、70歳以上の老人で、「免許の返納を考えたことがあるか」の問いに対し、「ない」と答えた人は85%もいたとのこと。「返納についてどう考えるか」については、「まだ普通に運転できるので返納しない」が72%もあったという。

    老人が運転をし続けることは、老人が有能感をもっている証拠。ポジティブな姿勢でいることはいいことなのだが、有能感が高くなければ、身体的な衰えや社会生活上の不自由さを感じながら、自分という存在を肯定して生き続けることはできない。歳をとるほどに自己肯定感が強くなったり、自尊心が高くなったりするのは、身体や生活がままならなくなったことにより、ともすれば自己否定に傾きそうな気持を上向けるための自己防衛機能。「運転をやめた方がいい」と言われることは、自分自身の能力を否定されることであり、これを受け入れることは自己否定につながる。

 

   老人が運転をやめないことは、つまりは自己効力感があるということで、自分の思い通りになることなのだ。歳をとって足腰が弱ると、歩く、電車に乗る、スーパーに行くなどで日常と違う行動にイライラすることが多くなる。しかし車の運転はほとんど考えることなく運転できる。思い通りになるがゆえ、運転への自己効力感が強くなっていく。運転することが、かけがえのないものになっていくがゆえ、老人は運転に固執するのである。

 

   運転免許を返納することは、いわば最後の砦を失うことになる。

   しかし一方で、運転能力の低下という事実もあり、それを本人も自覚している可能性がある。

 

   そういう時にどうするかは、本人が自発的に「もう運転はいいか」と思う方向にもっていくか、もしくは趣味やボランティアや自治会など、自己効力感のもてる別の活動を勧めるのが良いようである。

    ブレーキとアクセルを間違えた時に発進しない車の構造にすることは必須ではあるが、うまく免許の自主返納に持っていくためには、本人の自己効力感を疎外させない形で本人に納得させるのが最良の方法なのかもしれない。(参考文献「ご老人は謎だらけ」(佐藤真一))

f:id:laughing-egao:20210213174005j:plain

税金を納めるのは国民の義務