笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字509は「争」。改めて戦争や紛争について考える

 今日の漢字は「争」。競争、戦争、争点、論争、争奪戦。

 

    戦争を取材するジャーナリスト山本美香。彼女の著書「世の中への扉~戦争を取材する」を読む。

 

    難民、戦争で傷ついた人の診療所、紛争地域の子供たち、爆弾で傷ついた家族などを取材し、現場で起きていることを赤裸々にレポートする。

 

    現場で感じたこと、現地の人からの生の声を聞き、戦争とは何かを伝えている。

 

    その中で象徴的なのは、戦争のにおいについて述べている点。

 

   スクリーン上での戦争映画と現実の戦場で大きく違うのは、触覚と嗅覚をはっきりと感じることだという。

 

    爆弾の被弾から押し寄せる爆風、肌にべたつく空気、物が焼けるにおい、血や遺体のにおい、これらの感覚は何年たっても忘れることができないという。

 

    外国の街を歩いていて、似たような匂いが漂ってきたとき、意識の中ではその匂いがすぐに戦場へとつながる。そして「これは危険だ」「ここは安全だ」と経験に基づく臭覚で瞬時に判断するという。

 

   戦場で生活していると、目、耳、鼻などの感覚が鋭くなる。

 

   文明世界で暮らす我々は、元々の能力の100パーセントを使ってはいない。使わない能力はだんだん弱くなっていく。ところが身の危険が迫る戦場では、目も耳も鼻も敏感になる。少しのにおいの変化にも気づくようになり、まわりの気配も敏感に感じ取れるようになるという。

 

    全身にはりめぐらされた神経がとても鋭くなる。危険な場所にいることで、人間の潜在能力が掘り起こされるのだ。

 

    話は地雷に及ぶ。悪魔の兵器と呼ばれる地雷は取り除かない限り、20年、30年、もしかしたら100年爆発の危険を残したまま、土のなかに潜んでいる。

 

    地雷には対人地雷と対車両地雷があり、対車両地雷は頑丈な戦車をも破壊する。

    一方、対人地雷は人の命を奪うまでには至らず、大怪我を負うように設計されている。

 

    たとえ生き残ったとしても重い後遺症が残り、一生被害者を苦しめることになる。

 

   対人地雷は、踏んだ人を即死させるほどの威力はなく、踏んだ足が吹き飛ぶように作られている。戦場で戦う仲間の兵士が地雷で怪我をすると、部隊に大きな負担がかかる。生きてはいるが、片足のない、歩けなくなった兵士を運ぶことで同僚の兵士の体力が奪われ、すばやい行動ができなくなる。

 

    命を奪わず、重症を負わせることで、敵の士気を萎えさせる目的を担うのが、対人地雷なのである。

 

     そんな地雷を子供たちが誤って踏んでしまうと、足に大怪我を負い、結局は足を切断しなければならなくなる。そう思うと、戦場や紛争地帯に無数に埋まっている地雷を安全に取り除く作業は並大抵なことではない。

 

     金属探知機で地雷を探す地雷除去チームは、子供たちが不慮の事故にあわないよう、安全な生活が過ごせることを夢見て、やりがいをもって地雷の除去に取り組んでいるという。

 

    レバノンアフガニスタンコソボウガンダイラク。この10~20年の間でも世界のどこかで紛争や戦争があり、最近ではイスラム国の過激な行動に悩まされた。シリアなどから難民も多く出た。

 

    このようにいつ爆弾が投下されるかわからなかったり、テロで命を奪われたり、明日をも知れぬ日々を過ごしている人が世界には数多くいるし、その現実から目を背けてはいけないのである。

 

     しかし日本は安全で自由で平和な国であり、戦争や紛争は遠い国のことという感覚がある。平和ボケという言葉はそういう側面からきているが、彼女が書く報道レポートなどを通じて、少しでも世界で起きている現実に触れるとともに、日本という国を平和な世の中にしていく努力を、ひとり一人がしていく必要があるのだと思う。

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カネと選挙は政争の具だ