笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字701は「濠」。濠は、敵の侵入を防ぐ水路

今日の漢字は「濠」。外濠。

 

   防空壕のことを書きたくて「壕」の文字を調べたら常用漢字にはなかった。仕方なく「濠」に無理矢理登場いただいたが、外濠だけではネタにならない。よって防空壕

 

   防空壕といっても戦争のない現代日本では、今や防空壕など皆無である。しかし80年前の太平洋戦争では、日本のあちらこちに防空壕が掘られ、アメリカの空襲に備えていた。そんな防空壕について、戦争時に小学生であった私の父からは、よくその話を聞かされた。父が住む地域は田舎で、爆撃して壊すような工場群や民家は少なかった。しかし、いつアメリカの爆撃機B29が攻めてくるかわからないから、防空壕を掘り、空襲に備えていた。実際B29が飛んでは来るものの、そこに爆弾を落とすことはなく素通りし、遠く離れた別の町を空爆したようで難を逃れた。しかし空襲警報が鳴って父母や兄弟が揃って防空壕に移動する時は、生きた心地がしなかったという。

 

  「B29の飛行音は独特でな。ボロロンボロロンといつも不気味な音を立ててやってくるんだ」と父は振り返っていたが、その爆音を聞くだけで嫌な思いをしたことだろう。平和な今の時代では想像すらつかないが、戦争とはそういうものなのだ。

 

   防空壕という点では、ベトナムに行った時のこと。時間があったので、ベトナム戦争時に網の目のように防空壕が張り巡らされた「クチ」というところを訪ねた。ベトナム戦争は、現地の北ベトナム軍がアメリカに対しゲリラ戦を挑んだことで有名で、このクチでもかなりのゲリラ戦が展開された。ベトナム軍は敵を欺くため、何キロにもわたる防空壕式の地下トンネルを掘り、そこに籠って生活し、アメリカ軍と戦った。

 

   そのトンネルは平地からはしごで地下に降りていく。そこには人が普通に歩けるくらいの高さのトンネルが掘られている。そのトンネルがあっちに行ったりこっち行ったりと蟻の巣のように縦横無尽につながっている。しかもトンネルは2層、3層構造になっているほか、途中には作戦会議室なる広い部屋があるなど、まさにひとつの立派な建物のようである。

    では、この防空壕の地下トンネルにアメリカ軍がなだれ込んできた場合はどうなるのか。その時の記録映像が資料館に残っていたが、迷路のような防空壕トンネルにアメリカ兵は戸惑う。勝手知ったるベトナム兵は逃げるとみせかけて落とし穴に誘導。何も知らないアメリカ兵は落とし穴に落ち、その下にはドでかい剣山のような尖った針が並び、それが足に突き刺さるという漫画のような作戦が展開される。

 

   こうしたゲリラ戦などで体力を消耗したアメリカ兵は次第に精神的に疲れはて、厭戦気分につながっていく。

 

   そんな戦争遺産を見るにつけ、本当に殺し合いというのは、何て愚かなことなのかと改めて思う。そういう遺産を後世に残すことは、人々にその愚かさを気づかせるという点で意味がある。日本でも二度と防空壕を掘ることのないよう、我々大人は平和な世の中にしていかねばならない。

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江戸城の外濠は道路になってしまった