笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字504は「圧」。同調圧力からくる世間と社会を考える

今日の漢字は「圧」。圧力、指圧、威圧、血圧、圧倒。

 

    鴻上尚史佐藤直樹の対談本、「同調圧力」を読むと、世間が生み出す同調圧力で生きずらい世の中になっていることがわかる。

 

    日本人は、みんなと一緒主義。最初に教えられるのが、「人様に迷惑をかけない」こと。欧米のように、「ひとりひとりの個性があって、それを意識して社会で過ごせ」とはひと言も教えられない。

 

    日本人は世間に住んでいるが、社会に住んでいない。

 

    世間とは、現在および将来、自分に関係ある人だけで形成される世界。いわば会社、学校、隣近所といった身近な人々によって作られた世界である。

 

    一方、社会は、現在または将来において全く自分と関係のない人たち、いわゆる知らない人たちで形成された世界。電車の乗客や映画館の観客、居酒屋の客など。

 

 「あなたと関係のある人たち」で成り立っているのが「世間」、「あなたと何も関係のない人たちがいる世界」が「社会」である。

 

    例えば、何回か会う機会があり、会話するようになっても社会だが、やがてお互いが名乗り、どこに住んでいるかというようなことを語り合う関係に発展すれば世間となる。

 

   日本人は世間と社会の二重構造の中で生きている。

 

    私の経験でいえば、子供の少年野球の親の付き合い。参観日で父親同士が話すことは全くなかったが、少年野球チームの親同士ということで、濃密な付き合いがあった。参観日レベルでは社会、少年野球レベルで世間という表現が的を射ているであろう。

 

   日本の社会問題のほとんどは、この二重構造に端を発している。

 

 ネット世間の誹謗中傷や学校でのいじめによる自殺、引きこもりの息子を殺害した理由が「いずれ人様に迷惑をかけるから」。世間の枠の中で凶悪犯罪が起きている。社会の希薄さと世間の濃密さが、生きずらさにつながっている。

 

    電車で化粧する女性は、社会に生きていないから、社会の視線が全く目に入らない。しかし突然身近な、会社の同僚などがその車両に乗り込んでくると、途端に恥ずかしくなり、化粧を止める。世間に急にシフトチェンジしたから、世間でその噂を立てられることを恐れ、その輪からはみ出ないよう行動する。社会がタテマエ、世間がホンネとなる。

 

   「人様に迷惑をかけるな」の呪文が自殺者を増やす。自殺を促すのが同調圧力。「世間のルールに反するな」の圧力が人々を萎縮させてしまっている。「世間に迷惑をかけた」として命を絶ってしまう。

 

    日本人は社会が希薄なので、恋人を見つけるのも、結婚するきっかけをつかむのも世間の中でしか起きない。海外の場合は公園で出会ったとか、銀行のATMで出会ったということが普通にある。これはATMや電車の中でもフランクに声をかけられる社会が欧米にはあるから。日本人は結局人ではなく、どこに所属している人か、どこの世間に身を置く人かで判断してしまっている。

 

     日本人は他人を信用できるかも、どういう世間に属したかによってのみ判断してきた。その人間がどういう人間かを考えもせず判断もしてこなかった。名刺と地位、身分以外で人を判断する術はなかった。

    オレオレ詐欺が一向に減らないのも、子供を社会の視点で見るのではなく、家族という世間の構成員の視点で見るから。「お金に困っているなら身内が助けて当たり前」の発想となり、世間だから助けようとする。赤の他人のオレオレ詐欺には誰も引っかからないが、身内という強固な世間の強いつながりがあるから皆引っ掛かる。欧米であれば、「お前個人の責任だから父さんは知らん」で終わる。

 

  この生きづらい世の中を生きるために、鴻上氏が言う。

「対策は世間を複数持つ。趣味サークルやボランティアサークル、居酒屋常連客などの世間に属する。男も会社と家庭だけでなく、さまざまな世間に所属する。会社や学校のようなたったひとつの強力な世間を作らず、少しでも風通しを良くすることと、逃げ場を作ることだ」。

 

   ネットの誹謗中傷で自殺する人が後を絶たないのも、強力なネット世間に生きているから。複数の世間を持っていれば、逃げ場もあるという鴻上氏の指摘は正しい。

 

  世間と社会は根深い問題で簡単には解決しないが、少なくとも、「みんな一緒」ではなく、脱世間も視野に入れながら、臆せずに個性を発揮して生きることも有りなのかもしれない。 

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圧勝するのは気持ちがいい