今日の漢字364
今日の漢字は「全」。全体、全国、全額、完全、万全、全般、全て、全身全霊、完全無欠。
日本全国のJRの全ての駅に降りたつという、とんでもないことをしている鉄道ヲタクがいる。
横見浩彦氏。とにかく鉄道をこよなく愛し、ダイヤとにらめっこしながら、JRの全ての駅を乗降するという離れ業を成し遂げた。
私が彼を知ったのは、コミック「鉄子の旅」を読んだことから。漫画家の菊池直恵と横見氏が秘境駅やローカル線を訪れ、道中の模様を面白おかしく紹介するというストーリー。 漫画では、鉄道素人の菊池氏が、横見氏のあまりの鉄道ヲタクぶりに辟易しながらも、道中で繰り広げられるドタバタ劇を紹介する内容が小気味良く、毎回楽しみに読んでいた。
その後、横見氏の経歴に興味を抱いた私が、彼の著書「すごい駅!」を読んだところ、そこで彼の偉業である全駅踏破を知ったのである。
全駅踏破とは、日本のJRの駅4600駅の全てに降り立つということ。単なる列車に乗るだけの全線踏破と違い、駅の乗降とは、一旦電車から降りたら、もうその電車には乗れない訳で、次の駅に行くためには、後から来る電車を待たねばならない。それを続けるのは大変なことである。
著書で特におもしろかったのは、北海道での全駅踏破時。旭川から網走に行く石北本線は、特急も1日5本程度、鈍行に至っては、1日数本という超ローカル線。そんなローカル線に乗って全ての駅に降り立つというから、並大抵なことではない。鈍行しか停まらない駅(当然無人駅)に降り立てば、次の列車がくるまで、気の遠くなる時間を過ごさねばならない。
しかし彼は、上り列車と下り列車のダイヤを綿密に調べ上げ、ジグザグ乗車(上りに乗ったり、下りに乗ったり)でやり過ごしたり、列車がしばらく来ない場合は隣駅までひたすら歩くなど、常人はとてもできないようなことに果敢にチャレンジしていた。
列車の全線乗車の猛者は数多くいると思うが、全駅制覇は彼しかいない。ギネスものであろう。
そんな鉄道ヲタクの彼と、「鉄子の旅」の菊池直恵氏のやりとりは、鉄道専門家+ヲタク+うんちく語りVS鉄道の全くのド素人のバトルであり、会話があらゆる面でちぐはぐなことと、菊池が横見氏にイライラしまくる構図が微笑ましかった。
しかしそのシリーズも単行本7回ほどで終了。パート2、パート3も別の漫画家で描かれたが、菊池ほどのインパクトを残せず、迷走して終わった感がある。
ここは菊池氏に再登場いただいて、横見氏との粘着バトルを繰り広げてほしいと願っている。