笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字355

今日の漢字は「達」。友達、達成、達人、調達、到達、配達、伝達、通達、達筆、上意下達。

 

    マラソン徒然話第4話。最終回。

    酷寒の冬が終わり、春が来た。

    北海道人にとって、春が来るのは格別。雪に閉ざされた長く暗い日々から解放され、木々が芽吹くように、陽光に誘われて人々は外に出て活動を始める。農作業はまさにそう。おそらくウィンタースポーツ好きでない限り、北海道人は春か夏のどちらかが好きなはずだと確信が持てる。

    ランニングに関しては、ようやく雪のない道で走れるようになり、リードが外れて自由になった犬のように、ワンワン吠えながら駆け抜ける如く、トレーニングにも身が入った。

    「がむしゃら」という言葉が似合う、まさに一心不乱に走るという行為が私のライフワークとなり、ランニングが習慣化に。朝走り、夜走り、週末は長距離を走る日々。6月の千歳マラソンが待ち遠しくてしょうがなかった。

   そして待ちに待った大会。千歳マラソンJALが協賛する大会で、6月という、北海道では梅雨のない爽やかな時期に開かれることや、空港から近いこともあり、毎年道外からも多くのランナーが訪れる。9割以上が森林の中を走るコースで、結構アップダウンもある。河川敷を走る旭川ラソンに比べると5割増しのハードなコース。しかしランナーは森林浴を楽しみながら走れるので、マイナスイオンを思い切り浴びれる。走ることと森林浴という、ダブルで健康にいいと感じられ大会でもあり、北海道で開催されるフルマラソンの大会の中でも屈指の人気を誇る。

    ここに2回目のフルマラソンチャレンジとして出場した私は、結論を言えば、3時間57分のタイムで何と4時間切りを達成したのであった。

  初めてのコースで、分析もペース配分もへったくれもなかったが、とにかく無我夢中で歩を進めた。頭の中は「4時間を切る」ことしか考えず、ひたすらゴールを目指す。自分でも何でタイムでに拘ったか、あまりにも頑固だと今になって反省するが、「いつかは北海道マラソンに出たい」という夢を実現したい気持ちが頭の中に常時渦巻いていたからだと思う。

    きつかったのは最後の5キロ。しかし走っていながらも笑えたのは、ゴール手間3キロ付近の河川敷で、日曜日の昼をバーベキューでまったり過ごす数多くのグループの横を走ること。焼き肉の匂いがぷーんと漂ってくるのと、お酒を飲んで楽しそうに談笑する若いグループを横目に、こっちはしんどい思いをして走っているというギャップに、情けなさを通り越して笑ってしまった。

    ある意味ここで少し力が抜けて、残り2~3キロ、酒飲みに負けてられるかと、あとひと踏ん張りの活力がみなぎったのが逆に良かったのかもしれない。

    ゴールする瞬間の時計表示が3:57を示していた時は、心の中で快哉を叫ぶとともに、目標達成に大いに安堵。誰にも気付かれないよう、ちいさくガッツポーズをした。

   最後はヘロヘロだったが、目標を達成した時の充実感は半端なかった。

 

   人生の中で、何か目標を立てて頑張る機会はそうない。資格試験や検定試験で合格を目指すという勉学での目標はあるが、スポーツで、しかも中年になってから目標を決めてチャレンジする機会はそう無い。

     フルマラソンで4時間を切ると心に決めてから1年でその目標を達成できた充実感の裏側には二つのことが発見できた。一つは、「やればできる」と松岡修造がありきたりに言いそうなことを自ら普通に体験できたことと、もうひとつは、人間には眠っている潜在能力がどこかに必ずあると発見できたこと。

    その潜在能力と闘争心に着火したのが、インストラクターがいみじくも言った、「4時間切りなんて3年は無理でしょ」の言葉。

    常識ではそうかもしれないが、世の中に常識以外の考えは無数にある。スティーブ・ジョブズも常識を覆してIT革命の先駆者となった。

   我々はいつも「できる筈がない」という常識に囚われ、チャレンジせず、いかに能力を発揮していないことが多いか。「どうせ無理」をバネに変えて、見返してやろうとか、目標達成に向けて素直に愚直に取り組めば、最初はムリだと思われた目標をクリアできることだってある。

   そう感じさせた、マラソンチャレンジの経験であった。

   この話は今から15年前の話にも関わらず、ここまで思い出せるのは、当時の経験が衝撃的かつ貴重な出来事だったから。ある女性アスリートが「練習は裏切らない」と言っていたが、愚直に取り組むことがいかに大事かを身をもって体験できた。

   最後に付け加えれば、結果報告に、インストラクターのビックリした顔が今でも忘れられないことであった。

 

フルマラソンの挑戦はまだ続きはあるが、それは別の機会に。 

 

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死せる孔明生ける仲達を走らす