笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字333

今日の漢字は「駅」。駅舎、駅前、停車駅、駅弁、駅員、駅馬車、駅伝。

    鉄道おたく、いわゆる鉄ヲタの種類は、乗り鉄撮り鉄、路線鉄、時刻表鉄、音鉄、駅弁鉄などバラエティーに富む。

   小生は鉄ヲタではないが、どちらかと言えば廃線となった路線に興味がある廃線鉄。さらに廃線の中でも、残存や保存されている古い駅舎に興味がある。廃線駅舎鉄とでも呼ぼうか。なぜそこに惹かれるかというと、もうレールもなければ乗降するお客もいない、そんな空虚さがノスタルジーを誘い、感傷的な気分にさせてくれるから。特に歴史を感じさせる古い木造駅舎は、尚更哀愁と儚さを漂わせる。胸を熱くし、過去へといざなってくれる役割が古い駅舎にはある。

    特に北海道は国鉄時代に廃線となった路線が多い。レールはほとんどが取り払われているが、一部の駅舎については、自治体が保存の努力をしたり、沿線住民が保存に働きかけるなどして、取り壊されたり朽ち果てることなく残っているケースがある。駅舎が残るということは、確かにそこに鉄道が引かれていたという証でもあるし、歴史の遺産として後生に語り継いで行くというメッセージを伝えることにもなる。

   その使われていない、古い北海道の駅舎で、お薦めは何と言っても旧国鉄広尾線幸福駅帯広市から広尾町まで通っていた線路が廃止されたのは1987年。「愛国から幸福へ」の切符が人気となるのをきっかけに、幸福駅ブームが到来。多くの観光客がこの駅を訪れた。

   小生は20年前に訪問したが、こじんまりした木造の駅舎の中に、びっしりと貼られた名刺に圧倒された。主に東京など本州の企業に勤める人が多い印象を受けた。幸福駅のまわりには他に見るべき観光地がないのと、車でしか行けないような所なので、およそ1000枚はあるであろう、これだけの数の名刺を見るにつけ、一体どれだけの人々が幸福駅という言葉に魅了されるのだと驚いたものだ。  

   他にも北海道には廃線駅舎がたくさんあり、個人的に好きなのは空知地方にある、三笠駅。札幌から東におよそ1時間半。ここは幌内という炭鉱の石炭を小樽に運ぶために開設された幌内線といったが、炭鉱の衰退、閉山とともに廃線となった。近くには三笠鉄道博物館もあり、鉄ヲタが楽しめる地域ではあるが、駅舎を見るにつけ、日本の石炭政策に翻弄された地元の悲哀を感じざるを得ない。

  あとは、とてもマニアックだが、積丹半島の旧岩内線の幌似駅。岩内線は、函館本線小沢駅から分岐して岩内駅に至るローカル線であったが、この駅舎もこじんまりとたたずんでいて好きである。岩内も昔はニシン漁で栄えたが、栄華を極めた漁師たちが、この岩内から幌似を経て札幌や函館に向かったことを思うと、これまた儚さを感じさせる。

   全国にもこのように廃線の駅舎はたくさんあると思うが、そこに行き、切符を切る駅員、行商に行くおばあちゃん、都会に行く息子を見送る家族、そして列車の汽笛など、駅で繰り広げられる架空の姿を頭の中で想像してみれば、在りし日の時代にタイムスリップできるような錯覚に陥る。

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高倉健主演の映画「駅~Station」はまだ見ていない