笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字751は「着」。定着しなかったネーミング

今日の漢字は「着」。着手、着席、着地、着眼、着工。

 

   定着しなかったネーミング。代表的な例の第一位はE電であろう。JR山手線は、国鉄時代、国電と言われていた。国鉄からJRに民営化される際、国電に変わるネーミングが募集された。民電、首都電、東鉄、日電、民鉄などが候補にあがり、2位の首都電と20位のE電が最終審査で残った。最終的にE電が採用され、JR東日本は大々的にE電のPRを始めた。しかしこのネーミングは全く普及することなく、今は普通に「山手線」の名称となっている。企業側の思惑が必ずしも消費者に届くものではないという代表例だと思う。

 

    定着しなかったネーミング2位は、オレオレ詐欺に変わる「母さん助けて詐欺」。警視庁がオレオレ詐欺に変わるネーミングとして公表したが、これも全く定着しなかった。オレオレと電話口で犯人がしゃべると、電話を受けた親は「太郎かい?」などと思わず名前を出してしまうことから「オレオレ」とつけられたが、「母さん助けて」はどうも目線が弱い。「母さん助けて」はさまざまな親子関係のシチュエーションで使われるから、必ずしも詐欺とは限らない。詐欺を注意喚起する割には甘いネーミングと言わざるを得ない。

 

   第3位はフィーチャーフォン。このネーミングもほとんど聞かない。ガラケーの方が余程市民権を得ている。「ガラパゴスな携帯電話」が省略されてここまで普及するとは思わなかった。世界的にはフィーチャーフォンなのだろうが、ガラケーも日本でしか通用しない言葉。この言葉自体もガラパゴスであることを認識している人はどれくらいいるか。外国人にどう説明していいか悩む。そもそもfeature「特長がある」の英語を使う頻度がないことに原因がある。Futureとの誤解のなかで「未来の電話?」とも思われてしまう。定着しないのは必然の流れだったのだろう。

 

   東京ネタ2つ。東京さくらトラム。これは都電荒川線に変わるネーミングとして付けられた。しかしあまり定着していないよう。息子が荒川線沿線に住んでいて、そのことを聞いたら、「地元の人以外ほとんど知られていない」とのこと。もうひとつは渋谷センター街に変わる「バスケットボールストリート」。スポーツ振興と青少年の育成を目的にネーミングされたようだが、意味不明。通りにバスケットボールのリングでもあるのかと思ってしまう。確かにセンター街のイメージは猥雑と喧騒に満ちた、青少年の育成上はあまり良くないイメージである。たいした意味もなく一般名詞をくっつけても、歴史的背景がないと定着は難しい事例。

 

   最後に業界関係者の例。博報堂生活研究所の社員が30代女性の晩婚化、晩産時代の象徴として「晩嬢」(バンジョー)と名付け、ライフスタイルや生き方についてレポートした本があった。(「晩嬢(バンジョー)という生き方」山本貴代)。晩婚女性を象徴化するこの言葉は、残念ながら「婚活」「おひとりさま」のように流布することはなかった。本が売れて世間の耳目を集めれば定着しただろうが、「晩婚女子」というマイナスイメージが影響したか。業界の仕掛けという側面も垣間見られ、そういう姑息な発想だと見抜かれて逆に避けられる一例かもしれない。

 

    言葉や名前は生き物。突然出現し、長く使われる言葉もあれば、全く使われることなく忘却される言葉もある。言葉の洪水から適切な言葉を取捨選択する意識を持てば、世間や社会への見方も変わると思う。

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