笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字677は「羨」。羨望を誘発するグルメ番組は嫌いだ

今日の漢字は「羨」。羨望、人を羨む。

 

   個人的にあまり嫌いなテレビ番組は無いのだが、数少ない嫌いな番組に、ぐるぐるナイティーンの高級グリル料理対決番組がある。

 

    高級レストランで、メニューにある単品料理の値段を当て、近似値から最も遠い人が、参加者全員の食事代をご馳走するというもの。もう何年も続く番組だが、私は敢えて見ない。何回か見た段階で腹が立ってきたからである。

 

   参加するタレントは自腹でご馳走することを売りにしており、決して事務所やマネージャーが払っているものではない、だから真剣勝負とは言っている。しかしそもそも彼らにはギャラが入る。だから仕事でやっているわけであり、自腹だとしても、給料は入るわけで、まがいものの言い方。タレントの特権を生かし、芸能人は「こんなにおいしい料理を食べられるのだ」と視聴者を羨望の眼差しに導こうという魂胆であり、そういう風に紹介すること自体が、テレビ局の上から目線である。

 

    山田太一という脚本家が述べていたが、「今のテレビ番組は毎日のように食べ物に関する番組が紹介されている。タレントたちが美味しいと声を上げながら、大きな口を開けて頬張っている。多くの日本人が、食べ物に敏感になり、旺盛な興味と関心を持っている。果てなき食べ物への執着心。これは世界的に見ても普通ではない気がする」。(50代からいい人生を生きる人)

 

   今までテレビで視聴率が取れるのは、グルメと観光と言われてきた。しかしコロナ禍で観光は大打撃。観光番組は成り立たなくなった。そこでてっとり早く視聴率が稼げるのが食やグルメとなる。ナイナイの番組みならず、ケンミンショーや帰れま10などでさまざまな食がテレビを通じて紹介される。もしくはグルメ番組では、流行りの料理やスイーツが紹介される。すると次の日からは、紹介された店は、お客の長蛇の列となる。その繰り返しが日常で展開されてきた。

 

   ある店がテレビで紹介されて、お客が殺到。それにより常連さんの足が遠のき、ブームが去って飽きられた後、その店は常連が戻ることなく、閉店に追い込まれたという。食のブームは一過性であり長く続くことはあり得ないし、そもそも流行っている店は、テレビで紹介されなくても経営できるから、息が長く店を続けられる。

 

    テレビやSNSで人間が果てなき食べ物に執着し、評判の店に行くことがファッションと化している。一時期話題となったアンジャッシュ渡部のグルメ本もそのひとつ。ミシュランガイドもまさにそのもの。マスコミや人々の欲と洪水のようなSNS情報に踊らされているのである。

 

   山田太一氏は再び言う。「身近にあるものを美味しくいただく。私はそれで十分だ。味が気にいらなければ、ないよりもましだと思う。自分の目の前にあるものを愛せばいい」。

 

   時間とお金をかけて食への飽くなき欲望を達成しようとするのではなく、目の前にある毎日の食材を愛おしいと思って美味しくいただく、または料理をしてくれた人(家族)に感謝する、さらに目の前の食材を提供してくれる生産者のことを思って食べる。これらの習慣を持つことの方が情報に踊らされず、幸せ感をもって生活できるのではないかと思う。

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「羨望の眼差し」は定番すぎる