笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字932は「使」。上流言葉を使いこなす

今日の漢字は「使」。労使、使途不明、行使、大使、使者。

 

「上流の日本語」(本郷陽二)という本を読んだ。

    ヨーロッパの言い伝えで、「酒は香りで、花は色合いで、人は言葉づかいで判断される」とある。昨今の日本人の言葉づかいの乱れを指摘し、どんな言葉を選び、どんな語調で話すかによって大きく印象が変わってくる。

 

    特に最近の言葉の乱れで象徴的な言葉は「やばい」。語源は「彌(いや)危ない」で、本来は「まずい」「不都合だ」「格好悪い」のネガティブで使われていた。それが、使用範囲が広がり、「結構いけている」と、感動表現でも使われるようになった。本来の使い方や意味から逸脱しては「上流の言葉づかい」とは相反するものだとして警鐘を鳴らす。

 

そんな上流言葉のご紹介

 

「ほんのお口汚しですが」。「あまり美味しくないかもしれませんが」の意味で使いそうだが、それは間違い。「口を汚すくらいの量しかない」という意味。「お腹を満たすことができないかもしれませんが、どうぞひと口ご賞味ください」。実際に食べきれない料理があったとしても、へりっくだった言い方であり、マナーなのである。

 

「いただき立ち」。ご馳走になったにもかかわらず、何らかの用事ですぐ帰らねばならない場合。「いただく」は料理をいただく、おもてなしをいただくこと。「立つ」は「席から立つ」の2つの意味を兼ねる。「いただき立ちで失礼ですが・・」と使う。

 

お持たせですが」。来客者が持参した手土産を早速いただく場合。「お持たせ」は来客の手土産の尊敬語にあたるため、「お持たせですが・・早速ご馳走になります」と言って、来客者の手土産を出すようにする。

発展系で、よそからの頂きものをふるまう場合は「到来物」という。

 

「痛み入る」。感謝の気持ちを惜しみなく伝えるとともに、より深い味わいに変える。「丁寧なご配慮で痛み入ります」など。相似形は「恐れ入ります」。

 

「おめもじいただく」。「おめもじ」とは、「お目文字」。会うという言葉の謙譲表現。

「近いうちにおめもじ賜りたく存じます」「本日はおめもじいただく光栄にあずかりまして、うれしゅうございます」

 

「伏してお願いします」。「伏して」は、「ひれ伏す」こと。「伏してお願いします」は、これ以上ないほど深く腰を折り、頭を下げて「お願いします」を伝える。

相似形で「七重の膝を八重に折ってお願いいたします」。この言葉を使うと、相手は「えっ」となるだろう。

 

    お酒を勧められても飲めない場合は、「私は不調法ですので」。不調法は、「手際が悪いこと、行き届かないこと」、「不始末、粗相」。説明が下手なときは、「不調法でうまく言い表せない」。伝統芸能や絵画・陶芸など知らない分野なら「不調法でよくわかりませんが」という。

 

「お相伴にあずかる」。自分が主でない席に誘われた場合に使う。「お相伴させていただく」は、「本来は別の人のために用意された食事の席に、私まで招いていただき」の感謝の意を込めた言葉。「相伴」は元々茶道から出た言葉。主客の相客を相伴と呼ぶことに由来する。



   まだまだ紹介したい上品言葉はあるが、このへんで。覚えておいて、ここぞの場面で使えば、相手の見る目が違ってくるかもしれない。

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使途不明金は、怪しい響き