笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字357

今日の漢字は「裏」。裏切り、表裏、裏面、裏地、裏口、裏話、裏付け、脳裏、秘密裏。

  ミステリーで予想を裏切られること、いわゆる「どんでん返しミステリー」は面白い。著者と読者の騙し合い。あー騙されたーと思わず天を見上げた瞬間、著者のしてやったりとほくそ笑む姿が脳裏に思い浮かぶ。そこで今まで読んだ衝撃のどんでん返しミステリー小説三作品を紹介。

1.殺戮にいたる病(我孫子武丸)

    エログロな表現が満載で、読むのがしんどい。しかし最後の衝撃の事実には度肝を抜かれる。騙されたというよりは、そう来たかというストーリー構成の秀一さを感じる。半分猟奇的というか、スリラー的な要素もあり、現実的にはあり得ない設定ではあるが、近未来にはひょっとしたら起こり得るかもしれない。TBSのテレビドラマ「ずっとあなたが好きだった」の冬彦さんを思い出した。

2.葉桜の季節に君を想うということ(歌野晶午)

   ネットなどでは絶賛の嵐。それくらい「どんでん返し小説」と言えばこれを推す人は多い。ミスリードという表現がぴったりくるバイオレンスもの。読者の思い込みが覆されるラストで、ほぼ読者全員が騙されることは確実。

   私も騙されたのが悔しくて、もう一度読み返したが、ストーリー、ディテールも含め破綻がなく、改めて見事な騙しのテクニックに納得する。

   個人的にも数あるどんでん返しミステリーの中では、これがナンバー1だと思う。

3.イニシエーションラブ(乾くるみ)

   こちらをも思い込みの魔術にはまるが、男の視点で書かれていて、女性には不評との向きも。知人の女性もこの作品には共感できないと言っていた。共感出来ない理由は、ここに登場する女性の振る舞いだと思うが。確かにこんな女とは付き合いたくない。昭和後期が舞台の物語で、カセットテープに見立てて、sideーA、sideーBと二つの別々のドラマが進行する。全く2つの物語と思って読み進めると・・・。カセットテープを知る若い世代はいなくなった。

   この小説は映画化されてシネコンで見たが、主演の前田敦子は適役だった。しかし、このどんでん返しのストーリーを映像化すのは無理がある。小説の衝撃に比べれば、映像は説明が必要なので、少し白けた。シナリオ構成、編集の難しさを感じた。ちなみに著者の乾くるみは、男性作家とのこと。

 

   最後におまけ。どんでん返しではないが、それに近い衝撃が泡坂妻夫の「しあわせの書」。ミステリーは淡々と進んでいくが、最後に待ち構えているトリックに唖然とする。こういうトリックもあるのかと感心すること請け合い。唯一無二、人跡未踏のこのトリックは、相当練り込んで作ったのだと、作家の発想に喝采を送りたい。

  本っていーなーと改めて思う。

   

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経験に裏打ちされた自信って格好いい