今日の漢字396は「坑」。石炭との関連を考える
今日の漢字は「坑」。炭坑、焚書坑儒、坑夫、坑道。
北海道は石炭の産地。明治から昭和初期にかけての産業発展時に各地で炭鉱が開発され、多くの石炭を採掘。日本のエネルギー産業を支えた。
しかし主要なエネルギーが石炭から石油に代わり、数多くあった炭鉱も相次いで閉山。かつては人口10万人もいた夕張市も今や1万人を切り、市の体裁をなしていない有様。国のエネルギー政策に翻弄された運命を辿っている。
炭鉱の坑内へ坑夫が乗ったトロッコで採掘現場に下って行く映像を見たことがあるが、閉山となった今は実際に行くことはできない。夕張市の唯一の観光スポットである石炭の歴史村には、坑道や石炭の採掘現場を再現しており、往時を偲ぶことができる。
実際に地中で石炭を採掘する作業は大変だろうし、ガス爆発の危険など、常に隣り合わせ。坑道を進む時に、空気中の有毒ガスに敏感なカナリアを連れていくと聞いたことがあるが、それくらい過酷な現場だったことが想像される。
実は意外に知られていないが、今でも北海道には炭鉱会社がある。美唄という町に露頭炭を掘る会社があると聞き、1度見学に行ったことがある。穴を掘って坑道で進む採掘ではなく、地上にむき出した石炭をショベルカーでかき集めるというもので、石炭は電力会社の発電所で消費されるという。 むき出しの石炭は珍しいが、現地を案内してくれたその会社の人によると、このあたりは大昔は海で、のちに大きく隆起したとのこと。石炭は生物の死骸などが固まったものなので、海生生物が棲んでいた証なのだという。
夕張と美唄の石炭層は実はつながっていて、夕張は地中奥深くに石炭が埋蔵され、一方美唄は地上に山のように突き出して存在するので、石炭を集めやすいとのこと。
確かに目を凝らすと、土と石炭層の色は明らかに違う。削られた山肌は、普通の土の色であるに茶色と石炭色の黒のしましま模様。慶応ラグビー部のストライプシャツのようである。
暗い坑道を進むなどという危険はなく、青空のもと、ショベルカーでガキガキ、シャカシャカと石炭を崩し、ドカンとダンプカーに積む姿は、従来の炭鉱のイメージを覆すもの。こんな世界も日本にあるのだと感心した。
しかし使う石炭はあくまで発電用。最近は二酸化炭素排出問題で石炭の火力発電所も分が悪い。地球温暖化の元凶でもある石炭の活用が今後どうなっていくのか注目される。
見学が終わって帰ろうとしたら、その会社の人が、ちょっと待ってください、と言って、「これお土産にどうぞ」とくれたのは、直径20cmはあろうか、石のようなデカイ石炭の固まり。黒いダイヤと言われた石炭もこうして見ると異様な構造物。有り難く頂戴したが、はて、どこに飾ればいいかと、家のインテリアデザインをぶち壊す石炭のオブジェに一人困惑していたのだった。