笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字1033は「張」。松本清張のトラベルミステリーは、たまに読むと新鮮だ

今日の漢字は「張」。緊張、膨張、拡張、主張、張本勲、夕張。

 

 最近、なぜか松本清張にはまっている。きっかけは、名作「点と線」を何十年ぶりかに再読したことから。大学生時代に読んだきり、再読していなかったが、また読んでみようと手にとった次第。電車の時刻表を使ったトリックは、松本清張の十八番。「点と線」でも、その時刻表のトリックが見事に生かされていて、当時の記憶が蘇ってきた。今は「ゼロの焦点」を読んでいる。

 

 小説の舞台は昭和40年代で、夜行列車がやたらと出てくる。東京発博多行きの寝台特急「あさかぜ」や青森行特急「十和田」、函館発札幌行き「まりも」など、懐かしい電車が走る。時刻表トリックでは、犯人は寝台列車で移動したアリバイを見せつつ、実は飛行機で移動する。犯人はアリバイを完璧なものとするために、行き先で待つ人に「電報」を打つ。電報は、今は冠婚葬祭にしか使われない。しかし携帯電話もなく、電話料金が高かった時代には電報が重宝したのだ。

 

 犯人が寝台列車を使うということは、それだけ当時は新幹線や飛行機ではなく、寝台列車が出張や観光に普通に利用されていたことになる。これなら何となくトリックも思い浮かびそうなものだが、今のように新幹線や飛行機全盛で、とにかく効率よく早く移動する時代には、時刻表トリックもとりずらいと思う。だから松本清張の作品で殺人事件が起きるのは、九州や北海道、金沢など東京から離れている場所で、列車との関わりゆえでもある。

 

 先日、トラベルミステリーの第一人者である西村京太郎氏が亡くなられた。十津川警部という和製シャーロック・ホームズが活躍する鉄道ミステリーにファンは多い。電車の中で殺人事件が起き、それを十津川警部が犯人を突き止めるストーリーは比類のないジャンルを切り開いた。私は松本清張同様、西村作品は相当前に何作品か読んではいたが、最近はすっかりご無沙汰であった。あの当時、「電車の中で殺人事件など起きるわけがないだろう」とタカをくくっていたが、最近では新幹線の車内で無差別の殺傷事件が起きるなど、西村作品が現実のものとなっている。これはこれで頭の痛いところである。

 

 新幹線で殺人事件が起きた際、とある評論家が、JR東海は新幹線の乗車前に真剣に乗客の手荷物検査をすべきである」と主張していた。航空機ではあれほど厳重に手荷物検査をするのだから、新幹線でやるという主張は、至極全う。テロが新幹線でも起きうることは想定しておいた方がいい。特に航空機も新幹線も密室で逃げ場がないし、事故を起こすと大惨事になる。ロシアがウクライナ原発を攻撃するように、「何が起きるかわからない」想定外のことを常に想定しておく必要がある。

 

 旅情をかきたてつつもミステリーを楽しめる作品が後世まで残ってほしいと切に願っている。

 

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自分の経験を誇張してはいけない