笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字1021は「肝」。肝油はサメの油だった

今日の漢字は「肝」。肝臓、肝心、肝要、度肝を抜く、肝試し。

 

 子供の頃によく食べた食べ物に肝油(かんゆ)ドロップがある。今の若い人には「肝油ドロップ?何それ」だろうが、私が小学生の頃は夏休み、冬休みに入る前に教室で肝油ドロップが配られた。浅田飴のように丸く平べったい缶に30個ほどは入っていただろうか。飴玉のような丸い粒だが、硬くはなく、グミのような触感で甘い。当時小学生の私はなぜ肝油ドロップが配られるのかわからず、何で作られているかも全く興味が無かった。ただ「健康にいい」ぐらいの感覚で食べていた。

 

 そんな40年以上前の肝油ドロップの記憶はすっかり忘却の彼方であったが、ある時、肝油のことを思い出した。それは、「ほぼ命がけ サメ図鑑(沼口麻子著)」を読んでいた時に、次の記述を発見したから。

「サメやエイの仲間は浮力を得るためにうきぶくろを持っていない。代わりに大量の油(肝油)を蓄えている。水と油を混ぜると油が浮くのは、油は水より比重が小さいため。サメはこの油を利用して浮力を補っているのです」

 

 なんと、肝油は浮力を得るためにサメの肝臓に蓄えられた油だったのだ。そして人間はその油を食品にして利用していた。私は40年後に始めて、あの頃食べた肝油ドロップが実はサメの油だと気づき、衝撃を受けた。ネットで調べると、肝油は戦後の食生活が不安定な時代はビタミンAやDが不足していたり、夜盲症(とり目)になる子供がいたため、それを補うとして肝油が配られたのだとか。

 

 60歳近くになって今さらその事実に気づく自分も情けない。しかし偶然読んだこの「サメ本」は、私の膨大な脳のアーカイブから、肝油ドロップの記憶を思い起こさせてくれた。この功績は大きい。

 

 サメが食肉として利用される以外でも、こうして子供たちのビタミン不足を補っていたことを考えると、サメは身近な存在に思えてきた。

 

 著者によると、肝油は第二次世界大戦時にも重宝され、肝油が何と「ゼロ戦」の潤滑油としても使われていたようだ。浮力の足しにするために肝臓に蓄えられた油が、海のはるか上空で使われていたのも不思議である。

 

 そんな人間のお役に立つサメではあるが、スティーブン・スピルバーグの大ヒット映画「ジョーズ」の影響で、サメは獰猛で人を食べるイメージが定着している。しかしサメは基本的に警戒心が強く、人間側が何もしなければ襲われることはないという。一部に凶暴なサメはいるものの、おとなしいサメがほとんどなのだ。著者は、サメ=凶暴のイメージ定着を嘆いているが、海洋生物と人間との共存という観点で見れば、もっとサメのことを知っておくことも大切かもしれない。

 

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肝臓は沈黙の臓器