笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字1017は「古」。古文から和歌について考える

今日の漢字は「古」。古代、古都、復古、古城、古参、古河市

 

 和歌について考える。

 というか、日本史の素養は基本的に無く、半分ちんぷんかんぷんで今まで来た。この歳になって、もっと日本史を勉強しておけば良かったと思う。和歌にしても古文の授業で学んだはずではあるが、全く忘れている。そんななか、反省を込めて、古代の代表的な和歌を取り上げたい。

 

 万葉集は、7世紀に作られた日本最古の歌集。4500首の歌が収められている。相聞歌(男女の恋に歌)、挽歌(死者を悼む歌)、雑歌(それ以外の歌)からなる。その中で最も有名な歌といえば、次の歌。

「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」

 額田王の有名な歌である。高校の教科書で必ず目にしている和歌ではなかろうか。私もこの歌は記憶に残っている。

 

 訳は、「あかね色に輝く紫草を栽培する野であり、宮廷の御料地である野で、そんな袖をお振りになっては野守に気づかれてしまいますよ」

 

 額田王は最初、大海人皇子の妻となるが、その後大海人皇子の兄の中大兄皇子の妻となる。この歌の「君が袖振る」は、別れた夫の大海人皇子が大きく手を振って額田王に合図をするシーン。それを見た額田王は、「そんな目立ったことをすると野守(番人)に見つかってしまいます」。この歌が読まれた場所には、中大兄皇子も同席した宴会の席だと解釈されている。野守から中大兄皇子にチクられると焦る額田王の様子に、大海人皇子中大兄皇子との三角関係に苦悩する心情が見て取れる。

 

 それに対し、大海人皇子が次の返歌を歌う。

「紫の にほへる 妹を 憎くあらば 人妻ゆえに 我恋ひめやも」

 訳は、「紫草のように高貴で美しいかたよ、あなたが憎いはずなどないではないか。人妻と知りながら、これほど恋い焦がれているのだから」

 

 大海人皇子は愛する前の妻に対する心情を堂々と返歌として詠む。その内容は実に濃厚な恋歌である。この2首は宴会の席での戯言という説もあるが、三角関係の心情の吐露と考えれば、何と雅な世界かと恐れ入る。

 

 このあと、大海人皇子中大兄皇子の息子の大友皇子が戦争をする。古代における歴史的内戦として有名な「壬申の乱」。この「紫の・・」の歌が額田王という美女を巡る血なまぐさい皇位争いとともに語られるのも、何となく日本らしい文化的な匂いを感じるのは私だけだろうか。

 

 万葉集古今和歌集源氏物語枕草子など耳にすることは多かれど、ほとんど触れる機会が無く今に至っている。学び直しではないが、日本語訳でも何でもいいので書物を紐解き、歴史ドラマに触れることが、ひとつの教養を高めることになるのではないかと思う。

(参考文献「日本史百人一首」(渡部昇一著)

 

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懐古主義に浸るのもいい