笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字960は「穀」。輸入穀物を上手く食文化に変える日本人

今日の漢字は「穀」。穀類、雑穀、脱穀、五穀豊穣。

 

   別にバリバリの保守というわけではないが、日本が素晴らしいと思うのは、食へのこだわり。日本人は、蒸気機関車を新幹線に進化させたり、西洋便器をウオシュレットに変革させたりと、海外で生まれたものを本国以上に進化させる職人気質があるが、食もまさにそう。

 

 

    漫画家のヤマザキマリは「パスタぎらい」のなかで、住んでいるイタリアのパンは今ひとつ美味しくないが、日本のパンはすこぶる美味しいと絶賛する。イタリアはパンはあくまで脇役で、パスタや肉料理を平らげたあと、それでも足りない人がおまけでパンを食べる習慣だとか。だからパンの味やバリエーションへのこだわりは全くないという。

 

    翻って日本も、イタリアのパスタ同様、主食はあくまで米であり、夕飯の食卓で肉料理とパンではいかにも味気ない。やはりご飯文化の日本人としては、ご飯と肉を食べないと、お腹が満足しない。そういう意味ではパンも脇役のはずなのだが、日本でこれだけパンが流行するのは、朝食・昼食ニーズと小腹を満たせるちょっとした食べ物も食べたいというニーズを満たしているからだと思う。

 

    そもそも日本にパンが普及したのは戦後のこと。穀物の小麦を輸出したいアメリカの圧力で、大量の小麦輸入を約束させられた日本は、それを消費するために学校給食でパンの配給を始めた。昭和後期に育った団塊の世代は「学校給食といえばパン」。そんな習慣が次第に根付き、長い年月を経てランチはパンで過ごす人が多くなったと推測する。

   加えて、家庭の主婦も、毎日3食ご飯では、料理も大変。おかずを作る必要がないパンは、主婦の強い味方であるとともに、子供たちもバリエーションがあるパンを喜ぶこともあり、昼はパンのニーズが自然と強くなっていった。

 

  確かに街なかのどこのパン屋さんも、工夫を凝らしておいしいパンが目白押し。私の自宅の近くのパン屋も、お昼どきはいつも盛況。この店はちくわをパンに挟む「ちくわパン」が人気でそれ以外にもカレーパンや豚肉の入ったパン、ホワイトクリームたっぷりのパンなど、バリエーションも豊富。しかも1個150円程度と安い。

 

    ヤマザキマリのイタリア生活ではないが、卒業旅行でドイツやフランスで食べたパンはやたら硬くて味の薄いパンばかりだった。あまりに固くて一度口の中が切れたくらい。パン文化でありながらこの有様なのに、パン文化でない日本がここまでこだわって美味しいパンを作るパン職人の方には感謝の気持ちで一杯である。

 

    カレーライスやラーメン同様、他国の食文化をうまく日本人好みにアレンジして進化させる手法はパンでも同じ。個人的に思うに、今後のパンのトレンドとしては、惣菜パン、高級食パンときて、いつかはフランス風の「硬いパン」ブームが来るのではないかと感じている。日本のパンは総じて柔らかすぎて歯ごたえがないという意見も耳にする。硬いパンにハムやチーズを挟むフランス風のパンのニーズもあると思われ、いつかは人気に火がつくのではないかと密かに予想している。

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穀潰しと言われないよう注意しよう