笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字951は「泰」。負けても泰然と去る柔道家は格好いい

今日の漢字は「泰」。安泰、泰平、泰然自若、原田泰造

 

「世界の中で、いちばん柔道を知らない日本人へ」(松山三四六)という本を読む。

言わずと知れた日本発祥の武道で、オリンピックでも人気の競技の柔道。しかし日本発祥といいながら、今やフランスやブラジルの方が競技人口が多く、「柔道」よりも「JUDO」となりつつある。

 

    ところで、柔道で見ていて気持ちがいいのが、礼に始まり、礼に終わること。

    柔道の国際大会では、試合に敗けてもきちんと礼をせずに畳を降りる選手がいる。ある外国人選手は著者の松山氏に「負けて悔しいのに、なんでありがとうって頭を下げるのか」と問われた。

 

    この問いに松山氏は説明する。そもそも武道の修行場を「道場」と呼ぶ。道場はそもそも古代インドのマガダ国にあった菩提樹の下に存在した金剛座のこと。お釈迦様が悟りを開くために修行した場所をいう。要するに、道場は、力試しをする場でもなければ、決闘を挑んだり争って雌雄を決する場ではなく、自らの悟りを開く「自分の成長と、自分に克つことを修行する場」なのだ。道場は神聖な場所なのである。

 

    道場という神聖な場所で自らの鍛錬を積ませていただき、悟りを開くことを努力するのが目的。しかし自分の成長を試せないため、自分がどこまで成長するかを試すために、試したい者同士が試合をして、確認する。つまり試合は「試し合い」で、決闘でも争いでもない。試合の場での相手は自分なのである。(これは目から鱗だ)

 

   だから、負けたとしても、その負けた修行者はこう考える。「あなたのおかげで、自分がまだ修行しなければならないということがわかりました。試す場所を与えてくれてありがとうございました」。この「ありがとうございました」が試合後の「礼」の意味なのである。

 

    最近の柔道は、礼の意味を理解せずにJUDO教育がなされているために、礼も済んでいないのに走り回って観客席に勝利をアピールするようなパフォーマンスが出てしまうのである。

 

    柔道が始まる前と終わったあとの「礼」の所作には、そのような意味がある。今度柔道を見る際に、そうした礼の意味を知って見れば、柔道の武道としての美しさ、日本らしさがよりはっきりと実感できると思う。

 

    今年の東京オリンピックでは、柔道陣は男女とも前評判通りの実力を発揮し、金9個、銀2個、銅1個と、他国を圧倒した。阿部兄妹の金メダルなど、まさに東京五輪を語る上で記録と記憶に残る結果を残した。柔道に限らず、アスリートたちは、相手と戦う以前に「己と戦い、それに打ち勝って」大会に臨んでいる。負けてもきちんと選手が礼をして淡然と会場を去る姿が映しだされたりすると、競技への見方も変わってくる。スポーツっていいなあと改めて思う。

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松雪泰子は佐賀。好評してねえbyはなわ