笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字945は「放」。放屁の代償は高くついた

今日の漢字は「放」。放送、追放、放課後、放棄、解放、放言。

 

エレベーターについて。

 

    劇作家の平田オリザが、欧米と日本人のエレベーター乗車における文化比較について、こんなことを言っていた。

 

 「アメリカ人は、エレベーターに乗る時は、初対面の同乗者に話かけることが多い。それは民族が多様であるがゆえ、エレベーターで二人きりになると、『自分はあなたの敵ではない』ことを表現する必要がある。エレベーターの狭い空間の中で、お互いが敵意を示さないことを表現しないと緊張する文化である。一方日本は、島国のムラ社会でのんびり暮らしてきたから、知らない人から声をかけられる方が、逆に緊張する。だから日本人はエレベーターで声をかけないのは、コミュニケーション不足でも何でもなく、文化の違いだ」と指摘する。

 

   たしかに初対面の人とエレベーターで話すことはまずない。例えばいきなりエレベーターに乗り込んで来た人に「今日はいい天気ですね」などと話かけようものなら、「この人、ちょっとおかしいんじゃないか」とか、「このあと何か売りつけられるのではないか」と100%怪しい意識が頭を掠める。

 

    そんなエレベーターであるが、全くそういうシチュエーションがないわけではない。私が以前、勤めていた青森の会社があったビルは雑居ビルで、数社の会社が入っていた。たまたま冬の朝、大雪が降り、会社に着くときは雪まみれ。ロビーでコートの雪を払い、エレベーターに乗り込んだところ、別の会社らしき中年のおばさんが駆け込んできた。

   私は、彼女の頭に積もった雪をチラ見しつつエレベーターは2人だけだったこともあり、「よく降りますねー」と思わず声をかけた。

彼女は、「えー嫌になりますよねー」と反応。私も再び「そうですよねー」と返しそれで会話は終わったが、何となく和やかな空気がエレベーターの中を流れた。

 

    エレベーターでの見ず知らずの人との会話は滅多にないことだが、「雪=嫌なもの」という共通の意識がお互いにあるから、雪に関する会話なら共感を得やすいのだと思う。これが真夏の暑さや雨では会話にならないと思う。

 

    もうひとつは失敗談。そのビルには裏口にもエレベーターがあり、たまに使うことがあったが、ほとんど利用されていなかった。その日は日曜日で休みの会社が多かったが、私は休日出勤でその裏側のエレベーターに乗った。そして乗った瞬間、大便の便意を催し、誰もエレベーターにいないことから、軽く放屁した。一瞬間漂う独特の匂い。「どうせ誰も乗ってこないから大丈夫」とタカをくくっていたところ、普段は止まるはずのない4階でエレベーターが止まり、女性が乗り込んできた。

「あちゃー」。彼女は漂う匂いには当然気付いているはず。といっても私が降りる10階のボタンの灯りはついているから、途中で降りるのは不自然、私は針のムシロ状態で数秒を二人きりで過ごさざるを得なかった。

 

    彼女は7階で降りた。「あーあ。恥ずかしい」。誰もいないことに慢心した放屁の代償は高くついたが、時には起こり得ないことが起きることと、密室には要注意と、深く反省したのだった。

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放牧の牛を見ると心が和む