笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字926は「尊」。石炭をもっと尊敬しよう

今日の漢字は「尊」。尊重、尊敬、ご尊父、尊い命。

 

    最近、石炭への風当たりが強い。

    地球を温暖化させる二酸化炭素を大量に排出する元凶として、先日のCOP26では、世界各国は石炭火力発電所を将来的に全廃することを決めた。日本にもその施策を迫られ、多くの石炭火力発電所有する日本政府は頭を抱えている。原発が動かない中、石炭火力の比重が大きい日本は、そうそう簡単に全廃すると言えないところがつらい。



   石炭は日常生活ではほとんど馴染みがなく、一生その存在を見ること無く終える人が大半だろう。電力関係者で石炭火力発電所で勤務する人や、オーストラリアなどから石炭を買い付ける商社や輸送関係者しか、石炭を見ることはない。もしくは観光SLで石炭車に搭載された石炭を駅で見るくらいだろうか。

 

しかし、私の記憶の中では、石炭は古き良き昭和を彷彿とさせる代物なのである。

 

    それは、今はほとんど見かけない石炭ストーブ。どでかいだるま型の石炭ストーブは、私が通う中学校の教室の一角に存在感をもって鎮座していた。そのころはまだ石油ストーブが流行する前で、我が家は薪ストーブという時代。北海道では当時、かなり石炭が産出されたから、学校の暖房手段として石炭が重宝されていた。

 

    石炭ストーブが置いてある場所は、大抵が教壇に向かって左前方の窓際のそば。そこに、石炭の入ったストーブが赤々と息をしている。授業中は石炭当番が決められていて、石炭が消えそうになったら、新しい石炭を投入して再び燃やす。石炭を入れることを北海道弁で「くべる」と言い、クラスの誰かが授業中、石炭当番者に向かって、「少し寒くなってきたから、そろそろストーブに石炭をくべろ」と指示。当番者は授業中であっても、つかつかと前に行き、先生が喋るのを無視して黙々と石炭を投入した。

 

    石炭は、およそ直径が10cmはありそうな黒い塊。それが数十個ほど無造作に箱に入っている。それをスコップですくい、ストーブに投入。ただそれだけのことだが、当番者は1日で4,5回、授業中や休み時間に石炭投入の作業を強いられるのであった。

 

    そしてお昼休みの給食時は、牛乳温めタイム。石炭ストーブの上にはこれまたどでかい蒸発皿が載っていて、並々と水(お湯)をたたえている。これに牛乳瓶を入れ、じわじわと温めるのである。多いときには10本くらいの牛乳瓶が並んだ。冬の寒い北海道の給食に、温かい牛乳を飲みたい気持ちは痛いほどわかった。たまに温めすぎて牛乳が膨張して吹き出すご愛嬌もあったが、私は毎日の給食時の牛乳が楽しみで仕方がなかった。

 

    石炭は太古の生物の死骸が固まってできたエネルギーの元。それが使われなくなってしまうのだろうか。地球温暖化を助長するのは事実ではあるが、石炭だけを悪者にするのもどうかと思う。産業革命の主役となった石炭を尊敬し、21世紀においても技術革新により有効活用する術を見出すべきだと考えるのだが、理想を持ちすぎなのだろうか。

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ご尊顔という言葉はめったに使われない