笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字884は「井」。金沢で育った井上靖の本を読む

今日の漢字は「井」。井戸、天井、油井、井川遥井手らっきょ

 

   石川県。古都金沢、能登、輪島、加賀100万石のきらびやかさが残る。金沢は、前田家の伝統が色濃く残る街。とある霊能師が活躍する漫画で、その霊能師が金沢の街を俯瞰し、「この街は前田家に守られた穏やかな街だ」と評していた。そう言われてみると、確かに金沢は、台風や地震などで大きな被害が出た話を聞いたことがない。大概どこの県でも水害や地滑り、土砂や家屋崩壊など、何らかの被害が出るが、不思議と石川県や金沢ではその手の話を聞かない。霊能師が喝破するように、金沢、そして石川県全体が前田家に守られているのかもしれない。

 

    新幹線が開通してすっかり東京からの距離が近くなった石川県。能登などにも行きやすくなったことだろう。金沢訪問はまたまた学生時代に遡るが、あまり印象に残っていない。金沢城に行ったが、あの頃は金沢大学のキャンパスが城の中にあり、城を堪能できなかった。それ以来、訪問していないのでよくわからないが、キャンパスの移転に伴い、城も観光用に整備されたようである。

 

    金沢で思い出すのは、中学生の時に初めて読書感想文を書いたのが、井上靖私小説「北の海」。井上靖は「おろしや国酔夢譚」、「敦煌」などが有名な昭和を代表する作家。その井上少年が柔道家として金沢大学(当時の旧制四校)に入学し、そこで寝技主体の高専柔道に明け暮れる。当時、中学生の私は、その井上少年の柔道に打ち込む姿に感動し、その内容を読書感想文として提出した。なぜ私がそんな中学生時代の読書感想文のことを覚えているかというと、当時、相撲界では、北海道出身の大横綱、北の海が無類の強さを誇っていて、その名を轟かせていたから。そんな背景のなか、私が全く同じ響きを持つ「北の海」という読書感想文を出したものだがら、それが同級生の知るところとなり、大爆笑されたのだ。本を読んでいない生徒、本の存在を知らない生徒にとっては、横綱北の海の武勇伝の読書感想文かと勘違いするのは当然。そのアンバランスさに、いつしか教室は爆笑に包まれた。私は何だか恥ずかしくなり、せっかく真面目に読書感想文を出したものの、何となく居心地の悪さを感じたのであった。

 

   さて、サッカーはツェーゲン金沢。思い起こすは、2016年J2最終戦北海道コンサドーレ札幌VSツエーゲン金沢の1戦が札幌ドームであった。この試合、札幌は引き分け以上でJ1昇格。一方の金沢は引き分け以上でJ2残留が確定。試合はお互いに決め手を欠き、残り10分。どちらも引き分けでいい両チームは、お互いに攻めることをやめ、札幌の適当なパス回しを金沢の選手がただ見守る展開に。そのまま試合終了となり、お互いにWIN―WINの結末となった。

    この戦法は全く批判されるものではなく、お互いに生き残りをかける試合にリスクを犯す必要はない。観客にしてみたら、全くつまらない試合ではあるが、結果的にこの引き分けがあったからこそ、札幌はJ1に昇格できたし、金沢はJ3に降格せずに済んだ。2017年以降、お互いがJ1,J2で戦っていることを思うと、結果的にこの引き分けは大正解だったのである。

 

   一見不都合そうで、はたから見れば八百長のような悪どいサッカーも、さまざまな事情を抱えた大人の対応と割り切る。そしてルールの範囲内であれば、お互いの利益になるとしてサポーターも認める。いろいろな試合展開の歴史を積み重ねることにより、サッカーを見る人の目も徐々に肥えていくことだろう。

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ガンバ大阪の井手口はいい選手だ