笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字878は「富」。彼女は富山にいた

今日の漢字は「富」。富貴、富豪、富裕層、貧富、富士山。

 

山の付く都道府県5番目は北陸の富山に行こう。

立山連峰宇奈月温泉おわら風の盆、ガラスの街富山市

 

    富山といえば、学生時代に付き合っていた彼女が富山県出身だった。

    北陸地方の学生は、今はどうかわからないが、昔は東京に出る学生は少なく、関西方面の学校に入学する人が多い。今は首都圏へは新幹線で便利ではあるが、心理的、距離的、文化的には関西の方が近い。だから北陸3県の学生は関西の大学に進学し、帰省はJR西日本の特急サンダーバードで帰るものと思われる。

 

   当時付き合っていた彼女は、私とは違う関西の大学に在学中。頭のいい大学で、私とは学力に雲泥の差があったものの、なぜか付き合ってくれていた。

 

   同級生でお互い卒業の時期を迎え、彼女は実家のある富山に就職が決まり、私も北海道で就職と、お互いに離れ離れになるのはわかっていた。しかし、どちらから別れ話を切り出すでもなく、お互い遠距離になっても連絡は取り合おうということになった。

 

   彼女は大学を卒業して一足先に富山に帰り、私はその数日後、京都から北海道に移動した。北海道への移動は、飛行機ではなく、JR。卒業して帰るのにも、貧乏性な私は飛行機を使わず、JRを乗り継いで帰ろうと思った。当時は大阪から青森まで一気通貫する特急白鳥号が12時間かけて結んでいたので、それに乗り、青函連絡船、函館から札幌までの特急に乗り継ぐパターンで帰った。

 

    帰るにあたり、私は何だか予感がしていた。大阪から青森への途中、電車は富山駅に停車する。そこで彼女は駅のホームに佇んでいるのではないかということ。彼女は、私が京都を旅立つ日は知っていたから、ひょっとしたらホームにいるのではないかと予想した。今ならラインでちゃっちゃと連絡がとれるだろうが、この頃はそんなものはない。連絡をとる手段など皆無なのである。

 

    しかも特急電車は、ホームではごく僅かな時間しか停車しない。たとえ会っても1分程度。そんな時間しかないのに、果たしているだろうか。半信半疑で富山駅のホームに電車が滑り込み、ホームに目を凝らしてみていると、何と彼女がいるではないか。ドラマのような展開に私は感動し、通路を突っ走った。そしてドアが開いてホームに降り、彼女のもとに駆け寄った「来てくれたんだ」。「この電車に乗るの知っていたから来た。北海道に行っても元気でね」「うん、ありがとう。連絡するよ」会話はあっという間に終わり、発車のベルが鳴った。

私は後ろ髪を引かれるように、再び電車に乗り込んだ。

 

    彼女と会ったのは、それが最後となった。北海道と富山の遠距離恋愛はどだい無理。続くわけがない。その年の夏頃には「お互いに無理だね」と電話でやりとりをして交際はあっさりと終焉した。だからあの富山駅のドラマのような展開は強烈な印象となって記憶に残る。今、彼女は富山の地で一体何をしているのだろうか。それは知る由もないが、富山という地名を聞くたびに、あの時のホームの出来事を思い出す。

 

   さて、サッカーチームはJ3カターレ富山カターレは、「歌え」(イタリア語のカンターレ)、勝ての方言「勝たれ」が語源。YKKというサッシの会社と北陸電力の両企業チームが合併して誕生。元コンサドーレの監督をしていた石崎信弘氏が指揮をとっていて、少し身近に感じる。頑張ってほしいものである。

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一富士二鷹三茄子