今日の漢字851は「蜜」。失言はマスコミにとっては蜜の味
今日の漢字は「蜜」。蜂蜜、蜜柑、蜜豆、蜜月。
政治家をはじめ、失言は数多い。失言はマスコミにとっては、とっても美味しい蜜の味となる。そんな失言集を記述してみた。
最も有名な失言は、「私は寝ていないんだよ」。
雪印乳業の食中毒事件をきっかけに、当時の石川社長に取材が集中。会見後に執拗にぶらさがる記者に対してぶち切れた。その映像が何度も流れ、無責任な企業体質とトップのジコチューぶりを露呈。石川社長は2日後に辞任せざるを得なかった。不祥事の責任逃れをするかのような発言をすると、大バッシングを受ける典型的なパターンである。
「無礼なことを言うな。分をまきまえなきゃいかんよ。たかが選手の分際で」。
読売巨人軍渡辺恒雄オーナー。古田敦也選手会長のインタビューにかみついた発言である。
「たかが」の表現は選手や野球ファンの間で大問題になった。このお方は、野球は選手で成り立っているという認識は薄かったのだろう。いわば選手を商売の駒としか見ていない発想で、とても残念。野球界のドンは人気球団巨人の虎の威を借りてやりたい放題だった。個人的には大嫌いな人物の一人。
「慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる」。
橋下徹氏の失言。歴史的背景も何も説明せずに、あたかも慰安婦を肯定するかのような発言は完全に誤解を招く。韓国の反日感情の火に油を注ぐ形となった。外交に影響するセンシティブな話題を軽々しく発言するものではないという教訓である。
「まさに死の町という形だった」。
民主党政権時代の鉢呂経済産業大臣が、福島第一原子力発電所の現場周辺の視察後に発した言葉。放射線の影響でやむなく避難している地元民への配慮にかける発言に問題が噴出。9日後に辞任することとなった。本人は現地の状況を見た通り、正直に話したつもりなのだろうが、避難している人の感情を逆なでする発言は、大臣の発言としては不適切だった。
「北方領土を買ってしまってはどうですか」。
司会者みのもんたのTBS情報番組「朝ズバ」での発言。当時みの氏は視聴率の好調を受けて飛ぶ鳥を落とす勢い。コメントも言いたい放題だった。あたかも北方領土がロシアの領土として認めるかのような発言であり、口が滑ってしまった。みの氏も当たり障りのない発言では視聴率が稼げないとして、失言ギリギリを狙ったのだろうが、少しメーターがマイナスに振れすぎた。
「巨人は大したことなかったですね。シーズン中の方がよっぽどしんどかった」
近鉄バファローズ、加藤哲郎投手が日本シリーズのヒーローインタビューで発した言葉。これに発奮した巨人は、3連敗のあとの4連勝で近鉄を見事うっちゃった。選手のヒーローインタビューはほとんどが予定調和の「がんばります」系統で面白味はないが、加藤投手は珍しく「相手をバカにする」発言をし、それが結果的に対戦相手を刺激した。これも相手チームのファンに対する配慮とリスペクトを著しく欠く。相手を挑発する発言は、自分をヒールに陥れるだけで何のメリットもない。
以上、失言集を取り上げたが、地位の高い人、人気のある人、政治家などの公僕、有名ブロガーなどのひとことひとことは、社会的にも大きな影響がある。最近ではメンタリストDAIGOの失言も記憶に新しい。奇をてらって注目を浴びる手法もあるが、失言とは紙一重である。
そういう意味では、菅総理大臣には失言はなかった。ほとんどが原稿棒読みで心がこもっていないという批判を浴びたが、失言をして揚げ足を取られないよう、慎重に言葉を選びながら発していた。結果的に為政者は、「言葉で国民のハートに訴えながらもマスコミが飛びつくような失言を決してしない」という高度なコミュニケーション能力が求められる。そんなことができる今の国会議員はほぼ皆無と見ているが、うがった見方だろうか。
(参考文献:「小飼弾の失言学」)