笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字833は「砂」。砂時計の後半の勢いは半端ない

 今日の漢字は「砂」。砂丘、黄砂、砂金、砂利、砂嵐、砂川市。

 

    台所に100均のタイマーはあっても、砂時計がある家庭はそうない。砂時計があるのは、スーパー銭湯のサウナ。何時代からあるのかはわからないが、砂時計は電源がいらない、シンプルに時間を図る手段で、これほどわかりやすいものはない。

 

   百田尚樹「新・相対性理論」の中で、人生の時間を砂時計に例えるシーンがでてくる。

    若い頃は、有り余る時間をどう過ごそうか悩む。百田氏は、若い頃、退屈しのぎにどれだけ多くの貴重な時間を「つぶして」きたか。下宿でぼーっとしていたことがどれほどあったかを後悔する。

    そんな若い頃の時間は、砂時計をスタートさせた状態に似ている。砂時計の下を見ると、砂が落ちていくのは見える。しかし上の部分を見ても、砂は減っていくようには見えない。それどころか、砂は微動だにしないように見える。つまりは、砂は亀の歩みのようにゆっくりと動いているようにしか思えない。

 

    砂が減っていくスピードが自覚できるようになるのは、砂が半分以上、残り四分の一くらいになった時。すり鉢状になった砂が中心からもの凄い勢いで落ちていくのが見える。本当は最初から砂の落ちていくスピードは変わらないのに、その速度は加速しているように見える。しかし砂の落ちる速度を遅くすることも、砂を戻すこともできない。

 

    そして私達の人生も砂時計同様、時間の砂を止めることも戻すこともできない。

    砂は確実に「死」に向かって落ちていく。

 

    百田氏は現在64歳で、日本人男性の平均寿命が81歳なので、砂時計のほぼ8割が落ちたところと推測。そしてその砂時計の砂の落ちる速度がこんなに早かったのかと、驚きながら実感する。砂の落ちる速度は一定なのに、砂という時間が残り少なくなって初めて、時間の有り難みに気づいたのである。

 

    この百田氏の示唆はなかなか鋭い。確かに若い頃は時間は永遠にあると思われるから、無駄な時間を過ごしがち。それはそれでしょうがないし、若い世代の特権とも言える。そして年齢を重ねるごとに時間は減っていくのだが、年齢を重ねてもなかなかその事実に気づく人は少ない。何と言っても、サラリーマンが会社を退職したあとの定年退職後の時間。家でぼーっと過ごすことが多くなると、若い頃に無駄な時間を過ごしたと同じように、暇つぶしに終始することになる。しかし百田氏が指摘するように、砂時計の勢いは、若い頃とは比べ物にならないくらい勢いよく落ちている。要するに確実かつ急激に死へのカウントダウンが始まっているのである。

 

    砂時計という概念で時間を考えると、時間がいかに貴重かということが改めて理解できる。いくら巨額の富があったとしても、時間を買うことはできないし、若い頃の時間を取り戻すこともできない。

 

    お金はあの世には持っていけないが、時間も持ってはいけない。未来はどうなるかわからない。60歳を過ぎ残り少ない人生なのに、「将来のため」と年金だ老後だと嘆くのはナンセンス。砂の流れを意識しながら「今を生きる」観点で毎日、一日一日を大切に生きる。それしかないという結論になるのである。

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スタバは無いけど砂場はある