笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字830は「癒」。おにぎりは癒しの食べ物

 今日の漢字は「癒」。治癒、癒着。

 

    おにぎりへの思い。日本の代表的ソウルフード国民食でもあるおにぎり。食べると何となく力がついたような気分になるから不思議だ。おにぎりの活用シーンはさまざまで、遠足のお供はいうまでもなく、ランチの主食となったり、お弁当変わりとなったり、はたまた部活や残業時の腹ごしらえとなったりする。

 

    ヤマザキマリの「パスタきらい」で面白い風景に出くわす。

     イタリアの住む彼女が、コンパートメントの電車に乗り、おもむろにおにぎりを取り出して食べ始めたところ、車内は異様な雰囲気になった。海苔という磯の香りを嗅ぎ慣れたことのないイタリア人の間に戸惑いが広がる。向かいの親子連れの子供が「小さい子の頭なようなものを食べている」と母親に呟き、母親も返答に困る。ヤマザキ氏は慌てて乗客に「米を炊いて作ったものだ」と説明し、事なきを得た。しかし、わけのわからない異物を美味しそうに食べる東洋人が好奇の目で見られていたのは間違いない。

 

    日本にはコンビニにも売っている当たり前の食べ物だから特別違和感はないが、外国人にしてみたら、「この黒い物体は食べられるのか」と戸惑うことは必至である。そもそも世界中を見ても、イカスミのパスタは別にしても、真っ黒な食べ物はそうそうみかけない。我々は海苔は黒いという当然の意識あるから、何の違和感もなくおにぎりを食べるが、海苔文化のない大多数の他国民にしてみれば、石炭のような黒い物体を美味しそうにまるかじりする日本人は一体何者だと思うであろう。

 

    おにぎりの思い出といえば、具につきる。大概遠足で持っていくおにぎりは梅干しかおかかが入ったものがほとんど。たまに母親が奮発して卵焼きを作り、それを中に入れる卵焼きおにぎりというのが登場し、そんな時は心が弾んだ。しかし実は卵焼きおにぎりは全くの邪道であることは結婚してから知る。カミさんに話をしたら、「そんなおにぎり聞いたことない」とつれない反応。だったらと言って、1度卵焼きが中に入ったおにぎりを子供たちに作ってはみたものの、大不評。カミさんからも「全然おいしくない」とけなされる始末で少し凹んでしまった。

 

    おにぎりはお弁当と違って手軽だから良い。栄養バランスは決して良いとは言えないが、簡単に小腹を満たすという点では、おにぎりに優るものはない。お手軽ソウルフードとして比類なき地位を保つおにぎりの存在感は今後も廃ることなく、輝きを放ち続けるだろう。

 

    ヤマザキマリ氏はそんなおにぎりを「癒やし番長食」と命名する。落ち込んだ時や、どんなにか気持ちが荒んでいる時に、おにぎりを差し出されると、一気に心が温まる。こう聞くにつけ、おにぎりは単に空腹を満たす食べ物ではなく、日本人の心を落ち着かせたり、ほっとさせたり、和ませたりする魔法の食べ物なのかもしれない。

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癒着の本来の意味は、傷口が治ってふさがること