今日の漢字813は「覆」。VARの導入で判定は覆るようになった
今日の漢字は「覆」。覆面、転覆、覆水盆に返らず。
Jリーグは今年からVARが導入され、ゴールやファールが適切なジャッジだったかをリプレイで検証されるようになった。さまざまな角度の映像から判断し、精緻な判断を下すが、公平性が保たれていい。
日本のプロ野球も同様に1試合2回のリクエストが認められ、アウトかセーフか、ホームランかファールかなど映像を確認した上で判定がくだされる。
オリンピックでも、柔道やフェンシング、レスリングの試合で技が有効かどうか、ビデオ判定されている。
審判も人間だから、見間違うこともある。ゴールか否か、アウトかセーフ、技が決まったかなど、どっちに転んでもわからない微妙な判定でも、ほんの数ミリ、数センチで結果が変わる場合もある。
VARやリクエスト制度ができる前は、「ほぼ絶対的に審判が正しい」を前提にプレーが進められた。だから相手チームが審判にいくら抗議しようと、判定が覆ることは稀で、「ジャッジも含めてスポーツ」と納得するしかなかった。
判定という点で苦い思い出は、少年野球の練習試合で両チームのお父さんが塁審を務めることになり、私が1塁の審判をした時のこと。練習試合とはいえ、両チームとも真剣。試合は一進一退で進み、同点のまま最終回で、息子のチームが2アウト3塁。打者はショートゴロを打つも、ショートがボールをハンブル。慌ててボールを掴んで1塁に投げて、1塁の塁上は微妙なクロスプレーとなった。私は、ランナーの方が間違いなくベースに先についたとしてセーフの判定。3塁ランナーはホームインし、サヨナラ勝ちとなった。
あーやれやれと引き上げようとしたら、観戦していた相手チームの親が「あれはアウトだろう」と私に聞こえるように叫んだ。周りにいた他の親も「あれは違うよねー」などと噂しているのが耳に入った。それを聞いて何ともやるせなかった。確かに振り返れば微妙ではあり、自信があった判定とは言えない。どちらかと言えばセーフかなという感じ。それに対して少し強い口調で私に聞こえるように非難されたので、私は少しへこんでしまい、後味の悪さが残った。
これが素人の試合だから、どうということはないが、自分の給料がかかったプロの世界での判定は一つひとつが大きい。審判も真剣に裁かないと、選手生命を左右するとことにもなりかねない。一つの判定が勝敗の行方、選手やチームの勢いを変える要素もあるから、審判稼業も大変である。しかも相手チームに不利な判定だった場合、相手チームのファンから痛烈なやじやブーイングを受ける。精神的にも落ち込むことがあるのではないか。VARやリクエストで少しはファンの怒りも収まるだろうが、罵声を浴びせられれば、胃に穴が開くのではないかと思ってしまう。
ところでVARをぜひ導入してほしいのが、大相撲。行司の軍配が違ったり、同体など微妙な場合は「物言い」がついて競技審判団で協議するが、四隅に陣取る親方は何人もいらない。審判団とて、あくまで見た目の判断。それよりは、VARでビデオ判定した方がよほどわかりやすい。伝統を守る大相撲かもしれないが、そうしたスポーツの流れに逆行するようでは、ファン離れを招くのではないかと危惧してしまう。