笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字783は「仮」。文化祭の仮装行列は華やか

今日の漢字は「仮」。仮題、仮眠、仮設住宅、仮説、仮定。

 

    文化祭の季節である。

    7月のこの季節は、高校生が年に1度のお祭りとして、模擬店を出品したり、演劇や合唱を披露したりと趣向を凝らした出し物で文化祭を盛り上げる。

 

    なぜそれを思い出したかというと、たまたま散歩をしていたら、リヤカーを曳く高校生の姿を見かけたから。

「おー。リヤカー。懐かしい」と思わず呟いた。

リヤカー自体、久々に見た。どこかの農家から借りてきたことが容易に想像できる。

 

    昔は良くリヤカーを見たものだ。それは農作物を載せるためだったり、自転車などの廃品を載せるためのもの。以前は廃品回収を生業とする人が多くいて、各家庭から廃品を受け取り、処分するためにリヤカーを使っていた。

 

    軽トラックの普及とともに、リヤカーを曳く人が激減した。同時にリヤカーという簡易移動車を見かけることもなくなった。

   そんな中での高校生のリヤカー。不釣り合いな風景は、文化祭というキーワードとシンクロさせることにより、私の中で合点のいくものとなる。

 

    リヤカーは仮装行列の山車。つまり高校生が文化祭のイベントとして仮装行列で練り歩く際、中央のその象徴となるオブジェを立た山車を仕立て上げる。クラスごとに仮装の内容は違うから、例えば、スーパーマリオブラザーズをテーマにする場合は、マリオのオブジェを木枠や針金、布や紙を駆使して作る。そしてそれをリヤカーの荷台に神様のように鎮座させる。仮装者はピーチ姫やルイージクッパヨッシーなど、お手製のドレスに身を包む。

 

    仮装行列のオブジェづくりは大工仕事なので、制作が大変。オブジェは男子、衣装は女子の役割分担で、男連中は慣れない大工仕事に四苦八苦。徹夜になることもざらで、生徒は仮装行列の大賞を目指し、まさに青春に全力を注いだ。

 

   自分たちの時は、確か高2で戦国武将、高3でアラジンを仮装した。特に戦国武将は兜づくりに難儀した記憶があり、よくもあんなテーマを選んだものだと、今思うと冷や汗が出てきそうである。

 

   華やかな出で立ちで小一時間くらい練り歩き、沿道の住民に愛想を振り撒く。そして仮装行列が終わると、待っているのは制作物の解体作業。まずは参加者全員で記念撮影。そしてオブジェをリヤカーからとり外し、紙や布類、針金、木材の骨組みなどをバキバキと剥がしていく。この瞬間は何ともむなしい。何日もかけて魂を込めて作った制作物がいとも簡単に壊れていくさまを見て、当時私は「あー高3の夏は終わった。これからは受験勉強か」と空しくなった記憶がある。

 

    しかし文化祭はクラスが一体化できる貴重な機会。みんなで物を作り上げることはおそらく初めての経験だろう。その経験が大人になって役に立つのは間違いない。多くの人の尽力でひとつのことをやり遂げるのは、社会に出れば当たり前のこと。その大人への通過儀礼を、高校の文化祭は担っているのではないかと思う。

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