笑顔漢字日記

全ての漢字を笑顔にしたい。そんな思いで常用漢字2136文字を目標にエッセイを書く無謀な北海道在住のアラ還オヤジ

今日の漢字777は「紋」。家紋とは無縁の北海道人

今日の漢字は「紋」。紋様、紋章、波紋、指紋、紋別市

 

    家紋という言葉があるが、我が家にはとんと縁がない。家系図もそう。その存在すら探し出そうにも見つけることすら不可能ではないかと思う。

 

    よく3代東京に住めば江戸っ子というが、なかには、家系を辿れば由緒正しき家柄に行きつく場合もある。特に本州の各地方は武家社会の名残があるから、数代遡れば武士だ、商人だということを調べられる。

 

    ところが北海道人の場合は、ほとんどが開拓民だから、遡っても素性がよくわからない。私の曽祖父は北陸から、曾祖母は四国からの入植であった。なぜ北海道に彼らが渡ってきたのか。私の父も詳しい話は聞かされていないようで、結局よくわかっていない。

彼らが開拓のためわざわざ遠い北海道になぜ来たか。想像するに、

・貧しい農家で兄弟が多く、食い扶持を減らすため。

・開拓には政府がお金(旅費)を出してくれるから、それを利用して一旗あげようと思った。

・悪さをするなど地元にいずらく、地域のしがらみを逃れ、新天地で新たな気分で生活したかった。

・北海道を開拓するという、国家のために働きたいとして社会奉仕の精神で北海道の地を踏んだ。

 

    このような理由が想像されるが、例えば農家の次男、三男など、家の跡継ぎにもなれず、しかも地域に働く口がなければ、「国から補助金が出ることだし、いっそのこと、新天地で頑張ってみるか」と一念発起するような気がする。

    そうして北海道に渡り、鬱蒼とした森を開墾し、畑を作り、作物を育て、羆におびえながら厳しい冬をやり過ごすという経験を積んだ。それがたかだか150年ほど前にあっ た話である。

 

    もしもならず者が来ていたとしたら、先人の系譜がどこにあるか、辿ろうとしても難儀するのは必死である。良家の末裔が貧乏覚悟で開拓のために北海道に来るとは到底考えられないから、おそらく貧しい農家であったことは容易に想像がつく。ひょっとしたら、借金を踏み倒して北海道に逃げのびた人かもしれない。そんな素性のわからない人がゴロゴロいた中で歴史が受け継がれ、それが現代の北海道人の気質に表れる。要するに今いる生粋の北海道人は、とにかく家柄や家系に疎い。仮に東京で武家の末裔だという人に出会っても「はあ?だから何」の世界だろう。家柄と言われてもよくわからない。周りがみんな開拓民の末裔だから、「家の歴史」というものに無頓着なのである。

 

    よく北海道人は「来る者を拒まず」の精神が強いという。要するにしがらみがないから、人を家柄や社会的背景などで判断するのではなく、素のままで見る。だから拒む理由がない。そうして色眼鏡ではなく相手と接するから、相手は逆に居心地が良くなるのだという。そんなあっけらかんとした北海道人の性格は、「ならず者がつくりあげた国」と考えれば、何でもありの緩い掟しかないのかもしれない。自由奔放さを好むという気質も、「フロンティアスピリットに溢れた自由な国」と考えれば、何だか納得がいくような気がする。

f:id:laughing-egao:20210629194924j:plain

紋別の流氷船はガリンコ号という